梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「アベノマスクという愚策」(前川喜平)

 元文部科学事務次官・現代教育行政研究会代表・前川喜平氏が「アベノマスクという愚策」というコラム(「東京新聞」4月5日付け朝刊23面『本音のコラム』)を寄せている。「安倍首相は全国5千万世帯に布マスク2枚を配布すると表明した。恐るべき愚策である。」という書き出しで、(朝日新聞の情報によると)「全国民に布マスクを配れば、(国民の)不安はパット消えます」と、その愚策を提案したのが今井首相秘書官だったそうだ。さらに「今井氏や首相の最大の関心事は国民の健康ではなく政権の支持率だ。耳目を引く策を打ち出し、手なずけたマスメディアやSNSを駆使して『世論』を作りだせば、愚策も『英断』となり、支持率は上がる。(中略)『どうせ国民は愚かだ。いくらでもだませる』と見くびっているのだ。」と述べているが、全く同感、おっしゃるとおりである。
 国民の不安は、マスクが無いことではなく、新型コロナウィルスに感染しないか、それがもとで(自身も含め)親しい人が死なないか、という一点である。その不安を払拭するためには、①「あなたは今、感染していません」と保証すること(検査体制を整えること)、②「感染していても、死にません」と保証すること(医療体制を整えること)、③「この危機は、こういう形で、こうすれば、いつまでに終息します」と約束すること(情報を透明化して提供すること)が不可欠なのだ。 
 首相は狭量な秘書官の戯言に従うのではなく、まず国民一人一人の「声なき声」(様々な不安)に耳を傾け、一人でも多くの生命を守り抜く《責任》があるのだということを自覚せよ。そのために、今、何をしなければならないか。大切なことは《指示》することではなく、賢者の卓見に《従う》ことである。
(2020.4.6)