梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

虫歯治療

 私は先月末、歯痛に悩まされ、「いずれにせよ、流動食しか食べられない事態は避けなければならないので、近所の歯科医で受診した。レントゲン撮影の後、若い医師は「かなり虫歯が進んでいます。右上、左上、左下ですね。今日はとりあえず右上を治療します。右でも噛めるようになりますよ」。治療は30分ほどで終わった。今のところ麻酔が効いているので痛みは少ないが、本当に右でも噛めるようになるのだろうか、今後が楽しみだ。」と書いた。その後、循環器科の主治医に「虫歯治療をしてもよいか」確認、「服薬を続けていれば、かまいませんよ」ということだったので、継続して歯科医に通院、「右でも噛めるように」なった。しかし、今度は左下が痛み出し、全く噛めない。水を含んでも沁みる有様である。予約日は来週の火曜日だったが、急遽、今日の10時30分に割り込ませてもらった。
 若い医師は、予期していたように「左下ですか」と言う。「はい」と答えると「左下はかなり虫歯が進んでいます。いずれは抜かなければなりませんが、心臓病があるので、まだ無理です。応急的な措置をしたいと思います。その歯には金具(ブリッジ)がかぶさっています。その一部を切り取って治療したいと思います。左では噛めなくなりますがよろしいですか?」。同意すると「ではまず、麻酔をします」、ということで治療が始まったのだが・・・、痛い、痛い、「痛みますか?」「・・・!」「でも、辛抱してください」、痛い、痛い。やっと一段落したと思ったら、「少し、休んでから、もう一度、本格的に治療します」だと。待合室で待機15分、治療が再開した。おそらく口の中は血だらけ、でも若い医師はかまわずに虫歯を削り続ける。痛い、痛い。しばらくして「止血しとこうか」と言い、「セメント」「21番」などと看護師に指示する。そして20分後、治療はやっと終わった。鏡を見ると、左下の歯3本がきれいに消えていた。一番奥の歯に詰め物がしてある。「少しずつ治療していきます。今日は抗生物質と痛み止めの薬を出します。抗生物質は全部飲み切ってください。お疲れさまでした」。 
 今日の歯科治療は、これまでの中で、一番、痛かった。だから、この医師は一番の名医に違いない。事実、「右でも噛めるようになりますよ」という一言は、実現されたのだから・・。そして、なるほど「左では噛めなくなった」、左下の歯(奥・横)は全くなくなってしまったのだから・・・。(2018.11.17)