梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・26《Q 新型コロナでは世界中で休校措置がとられていますが、日本でも必要なのでしょうか?》

《Q&A》
Q 新型コロナでは世界中で休校措置がとられていますが、日本でも必要なのでしょうか?
A・生徒や学生たちにとって、「対面授業で学ぶこと」は無機質な画面のオンライン授業では得られない貴重な財産となり、重要な権利でもある。コロナ騒動で深刻化するインフィデミックに翻弄されず、冷静に対応することが日本人の現在と未来を守るために大切だ。


Q PCR陽性者に対して「罰則付き自粛規制」を求める声もありますが、問題はないのでしょうか?
A・大いに問題あり、基本的に間違いだ。PCR検査数を増やして検出されている陽性者の大半は無症状の健康成人であり、重症者や死者はほとんど認められていない。医学的には2020年夏より、春のほうが悪い状況であった。
・非常事態ではヒステリー反応を起こさず、全体像を俯瞰的に捉えて科学的に対応することが大切である。


Q 7月後半から全国的に感染者が増加していますが、状況は深刻になっていくのでしょうか?
A・春には重症者や死亡者が増えていたが、その後、検査数を大幅に増やしたためにPCR陽性者が増えるのみで、重症例や死者数はほとんど増加していない。
・PCR陽性者の増加は、検査数を大幅に増やすと同時に、対象者の基準を大きく広げたことが主因だ。
・すでに集団免疫力を獲得している日本では、MERSのような猛毒新型変異株が誕生しない限り、大惨事にはならないと考えられる。大学教授や医学研究者には俯瞰的な視野が強く求められる。


Q 不要不急の外出への強い自粛要請が続くと、健康へはどんな影響があるのでしょうか?
A・運動不足による肥満、高血圧、糖尿病、高齢者などでは(コロナウィルスがヒトに感染する際に必要な)ACE2受容体が増加する。
・健康な成人は安心して社会活動を行い、発症した場合のみ自宅待機や受診をすればよい。健康な高齢者にも過剰な自粛は禁物であり、基礎疾患のある高齢者が流行期間中に自粛して小まめに感染予防をすれば十分だ。
・「次の波」に対しては、PCR検査よりも発症者の情報や遺伝子解析などで新型ウィルスの性質を正確に把握し、過剰反応せずに対応することが大切である。


Q コロナ自粛で多くの国民が経済的に困窮すると、どんなことが懸念されますか?
A・推計では新型コロナの自粛による景気悪化で失業者が激増し、自殺者も約4倍増える可能性が危惧されている。
《図19》1953~2013年までの日本の失業率と自殺率は連動的に変化している。失業率が増加すると自殺率も増加するので、わずかなコロナ死者を抑制する代償として圧倒的に多くの自殺者を出す可能性が危惧される。


Q 東京都が除外された「GoToトラベル」は、観光地に被害を与える可能性はないでしょうか?
A・このキャンペーンが夏から秋にかけて全国一律に利用されていれば、免疫的ブースター効果により次の波のリスクを軽減する可能性が高かったと思われる。
・GoT
oトラベルはこれまでの自粛政策とは整合性を欠く反自粛政策だが、医学的見地からは問題がなく、倒産寸前の観光地や関連業者には一時的なカンフル注射程度の効果はあると思われる。


Q 国際便の再開で海外から新々型の変異ウィルスが上陸した場合も被害が少ないでしょうか?
A・新型コロナウィルスは、今や「相当部分が既知のをウィルス」になった。しかし、日本や世界中で多くの突然変異株が今も誕生しつつあり、今までと異なる猛毒株が出現する可能性もある。
・専門家はこの半年間に世界が経験した健康被害をしっかりと解析し、政府に「科学的かつ俯瞰的な対策 を提言できるようにする必要がある。
・国民はメディアやSNSのインフォデミックに翻弄されず、正しい科学的知識の重要性を学び、「こころの免疫力を強化する予防ワクチン」にしてもらいたい。


【感想】
・著者は昨年9月の時点で、「次の波」について(日本人は集団免疫力を獲得しているので)「猛毒新型変異株が誕生しない限り大惨事にはならない」と予測している。ちなみに、9月1日現在の「実態」は以下の通りであった。(「厚生労働省」ホームページ)
●PCR検査数1490975 陽性者数69369 有症者数9238(重症者数234) 退院者57823 死亡者1296 
 陽性率4.5% 有症率13.5% 重症化率2.5% 退院率6.2% 致死率1.8% 検査率1.2%
 また1月16日現在の「実態」は以下の通りである。
●PCR検査数5992647 陽性者数315910 有症者数66761(重症者数965) 退院者243973 死亡者4280
 陽性率5.4% 有症率21.1% 重症化率1.4% 退院率3.6% 致死率1.3% 検査率4.8%
 昨年9月以降、感染状況はどうなっているか。まず検査数は3~4倍に増加している。それに伴って陽性者数、有症者数の割合も増加しているが、重症者、死亡者の割合は増加していない。
・上のような比較が「科学的知識」に基づいているかどうかは不明だが、今のところ、著者の予測通り、「大惨事」にはなっていないようだ。しかし、「緊急事態宣言」による経済的なダメージの方は避けられないだろう。
(2021.1.18)