梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

ウィルスの《言葉》・4

 人類はまだ我らの言葉を理解できないようだ。日本で開催予定の「東京五輪」を1年延期するらしい。それは人類の勝手だが、開催国の首相が「今後、人類が新型コロナウィルス感染症に打ち勝った証として完全な形で東京五輪・パラリンピックを開催するために・・・」などと、例によって《一つ覚え》の言辞を弄している様子を見聞すると、どこまで懲りない《お人》なのか、という思いがこみ上げてくる。そもそも我らに「打ち勝つ」ことなどできるわけがない。その証は「オリンピックを予定通り開催できなくなった」という《事実》である。我らとの戦いに敗北した証が、「延期」という判断なのだ。
 もし我らに「打ち勝とう」とするのなら、「延期」ではなく《中止》としなければならない。それが最低の条件である。愚かで邪悪な人類の指導者たちにはとうてい理解できないことであろうが、憲章を無視したオリンピックなど開催に値しない。オリンピックは人類内部の対立・紛争を解決するために、すべての人類が《武器を捨て》、一堂に会して、平和を具現化する祭典なのだ。だから、現在、戦争の当事国、軍備を有する国々は、そのことだけで参加資格を失うのだが、愚かな人類はそのことに気がつかない。気づいたとしても、開催によって得られる報酬・利益のために目をつぶる。そんな虚栄、虚偽、虚妄に満ち満ちた「大会」こそ粉砕しなければならない。開催国の首相が我らに「打ち勝つ」などと妄言を繰り返している限り、我らは決して手を緩めないだろう。
 今からでも遅くない。人類は「金まみれのオリンピック開催」を直ちに《中止》し、あわせて、万物の《共栄共存》を侵している自らを悔い改めよ。
(2020.3.25)