梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「旧約聖書」通読・《創世記》・第30章

■第30章
・ラケルは自分がヤコブに子を産まないのを知った時、姉をねたんでヤコブに言った。
「わたしに子どもをください。さもないとわたしは死にます」。 ヤコブはラケルに向かい怒って言った。「あなた胎に子どもをやどらせないのは神です。わたしが神に代わることができようか」。ラケルは言った。「わたしのつかえめビルハがいます。彼女の所におはいりなさい。彼女が子を産んで、わたしのひざに置きます。そうすれば、わたしもまた彼女によって子を持つでがいます。しょう」。ラケルはつかえめビルハを彼に与えて、妻とさせたので、ヤコブは彼女の所にはいった。ビルハは、みごもってヤコブに子を産んだ。そこでラケルは、「神はわたしの訴えに答え、わたしの声を聞いて、わたしに子を賜った」と言って、名をダンと名づけた。ビルハはまたみごもって第二の子を産んだ。そこでラケルは「わたしは姉と争って勝った」と言って、名をナフタリと名づけた。
・レアは自分が子を産むことのやんだのを見たとき、つかえめのジルバを取り、妻としてヤコブに与えた。
・レアのつかえめジルバはヤコブに子を産んだ。そこでレアは「幸運がきた」と言って、名をガドと名づけた。ジルバは第二の子を産んだ。そこでレアは「わたしは、しあわせです。娘たちはわたしをしあわせ者と言うでしょう」と言って、名をアセルと名づけた。
・さてルベンは麦刈りの日に野に出て、恋なすびを見つけ、それを母レアのもとに持ってきた。ラケルはレアに言った。「あなたの子の恋なすびをどうぞわたしにください」。レアはラケルに言った。「あなたがわたしの夫を取ったのは小さな事でしょうか。その上、またわたしの子の恋なすびをも取ろうとするのですか」。ラケルは言った。「それでは恋なすびに換えて、今夜彼をあなたと共に寝させましょう」。夕方になって、ヤコブが野から帰ってきたので、レアは彼を出迎えて言った。「わたしの子の恋なすびをもって、わたしがあなたを雇ったのですから、あなたはわたしの所に、はいらなければなりません」。ヤコブはその夜レアと共に寝た。神はレアの願いを聞かれたので、彼女はみごもって5番目の子を産んだ。そこでレアは「わたしがつかえめを夫に与えたから、神がわたしにその値を賜ったのです」と言って、名をイッサカルと名づけた。レアはまた、みごもって6番目の子を産んだ。そこでレアは「神はわたしに良い賜物をたまわった。わたしは6人の子を産んだから、今こそ彼はわたしと一緒に住むでしょう」と言って、その名をゼブルンと名づけた。その後、彼女はひとりの娘を産んで、名をデナと名づけた。次に神はラケルを心にとめられ、彼女の願いを聞き、その胎を開かれたので、彼女はみごもって男の子を産み、「神はわたしの恥をすすいでくださった」と言って、名をヨセフと名づけ、「主がわたしに、なおひとりの子を加えられるように」と言った。
・ラケルがヨセフを産んだ時、ヤコブはラバンに言った。「わたしを去らせて、私の故郷、わたしの国へ行かせてください。わたしがあなたのために働いた骨折りは、あなたがごぞんじです」。ラバンは彼に言った。「もし、あなたの心にかなうなら、とどまってください。わたしは主があなたのゆえに、わたしを恵まれるしるしを見ました」。また言った。「あなたの報酬を申し出てください。わたしはそれを払います」。ヤコブは彼に言った。「わたしがどのようにあなたに仕えたか、どのようにあなたの家畜を飼ったかは、あなたがごぞんじです。いつになったらわたしも自分の家を成すようになるでしょうか」。彼は言った。「何をあなたにあげようか」。ヤコブは言った。「なにもわたしにくださるに及びません。もしあなたが、わたしのために一つの事をしてくださるなら、わたしは今一度あなたの群れを飼い、守りましょう。わたしはきょう、あなたの群れをみな回ってみて、その中からすべてぶちとまだらの羊、すべて黒い小羊と、やぎの中のまだらのものと、ぶちのものとを移しますが、これをわたしの報酬といたしましょう。あとで、あなたがきて、あなたの前でわたしの報酬をしらべる時、わたしの正しい事が証明されるでしょう。もしも、やぎの中にぶちのないもの、まだらでないものがあったり、小羊の中に黒くないものはあれば、それはわたしが盗んだものとなるでしょう」。ラバンは言った。「よろしい。あなたの言われるとおりにしましょう」。そこでラバンはその日、雄やぎのしまのあるもの、まだらのもの、すべて雌やぎのぶちのもの、まだらのもの、すべて白みをおびているもの、またすべての小羊の中の黒いものを移して子らの手にわたし、ヤコブとの間に三日路の隔たりを設けた。ヤコブはラバンの残りの群れを飼った。
・ヤコブは、はこやなぎと、あめんどうと、すずかけの木のなまの枝を取り、皮をはいでそれに白い筋をつくり、枝の白い所を表し、皮をはいだ枝を、群れがきて水を飲む鉢の中に、群れに向かわせて置いた。群れは水を飲みにきた時に、はらんだ。群れは枝の前で、はらんで、しまのあるもの、ぶちのもの、まだらのものを産んだ。ヤコブはその小羊を別においた。彼はまた群れの顔をラバンの群れのしまのあるものと、すべての黒いものとに向かわせた。そして自分の群れを別にまとめておいて、ラバンの群れには、入れなかった。また群れの強いものが発情した時には、ヤコブは水ぶねの中に、その群れの目の前に、かの枝を置いて、枝の間ではらませた。けれども群れの弱いものの時には、それを置かなかった。こうして弱いものはラバンのものとなり、強いものはヤコブのものとなったので、この人は大いに富み、多くの群れと、男女の奴隷、らくだ、ろばを持つようになった。
(2021.10.1)