梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「一億総マスク」の《矛盾》

 今や、3歳未満の乳幼児を除けば、ほぼ全員の日本人が、屋外でもマスクを着用している。なぜだろうか。いうまでもなく、「新型コロナウィルス」の感染防止のためである。しかも、マスクは「自分がうつらない」ためではなく「他人にうつさない」ために有効だといわれている。だとすれば、ほとんどの日本人が「他人のために」(利他的に)マスクを《身銭を切って》着用していることになる。まことに見上げた根性、おそるべき民度の高さだ。でも、本当にそう断言できるか。もし、日本人がそこまで利他的なら、「あおり運転」「振り込め詐欺」「万引き」「窃盗」「傷害」「放火」「殺人」等々の犯罪が起きるはずがない。しかし現実は、マスクを着けた運転手の自動車が、マスクを着けた人が乗った自転車を車道から締め出し、その自転車が歩道にはみ出して、マスクを着けた歩行者を「邪魔だ」と言って脅かす。まさに弱肉強食の世界が展開しているではないか。 
 他人を守るためにマスクを着けているにもかかわらず、平気で弱者をいじめている。「どの面下げて」といった《矛盾》が露呈しているのである。
 どうやら「他人を守る」というのは《建前》で、マスク着用の動機、理由は他にもありそうだ。あの、古来からある《隣百姓》という習慣だとしたら、救いようがないか・・・。
(2020.10.30)