梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・劇団素描「劇団KAZUMA」(座長・藤美一馬)

【劇団KAZUMA】(座長・藤美一馬)〈平成20年6月公演・横浜三吉演芸場〉
入場料を払おうとすると、玄関ロビーはいつもと違い、外国人の若者で「ごった返していた。今日は込んでいるのかなと一瞬思ったが、さにあらず、彼らはカナダからの大学生で総勢約20名、教授とおぼしき中年女性が引率して見学に来た模様、一般客も約20名。芝居の外題は「月夜の旅鴉」、筋書きは定番、賭場荒らしの仲間から「足抜け」して(堅気になり)親孝行(の真似事)をしようとした弟分・翫八(仲間に斬殺された)のために、その兄貴分・市川の新三郎(座長・藤美一馬)が金を届ける話。目立った役者は、座長の他には、翫八の父親役・行徳の仁平(冴刃竜也)、賭場荒らしの頭領・八丁嵐の権九郎(大槻海斗)、新三郎の父(芸名不詳・瑞季彪雅?)ぐらいであったが、きちっとした(楷書的な)演出で、さわやかな印象を与える舞台であった。
 座長の口上によれば、7月は大阪、8月は和歌山だが、9月は浅草木馬館、10月は十条篠原演芸場での公演が決まっているとのこと、だとすれば「人気」「実力」ともに「水準」以上の劇団であることが窺われる。座長の舞台姿は、細身のため「立ち役」ではあまり輝かない。(津川竜に似ている)コミカルな二枚目、女形の方が向いているのではないか。しかし、脇役が揃っており、幅の広い、中身の濃い芝居が期待できるのではないかと思った。「華の新歌舞ショー」では、藤美真の助、藤美京介の歌唱が「お見事」、林愛次郎の女形舞踊も「水準」以上であったと思う。
(2008.6.10)