梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

コロナ禍の《本質》

 「東京新聞」朝刊の23面に、「コロナの30代女性 自宅療養中自殺か 娘も陽性、思い悩む」という見出しのベタ記事が、《目立たないように》載っている。本来なら1面のトップ記事でも「相応しい」内容なのに・・・。以下は、その全文である。
〈新型コロナウィルスに感染した東京都内の三十代の女性が、自宅で療養中に亡くなっていたことが捜査関係者への取材で分かった。自殺とみられる。小学生の長女も同時期に陽性と判明。「学校でコロナを広めてしまった可能性がある。娘の居場所がなくなるかも」と夫に悩みを打ち明けていたという。捜査関係者によると、女性は夫と子どもの四人家族。女性と長女は先に陽性となった夫の濃厚接触者と認定され、今月8日にPCR検査で陽性が発覚。無症状だったため、自宅療養していた。15日朝に女性が自宅で倒れているのを見つけた夫が110番した。自殺をほのめかす内容のメモが見つかっているという。小池百合子都知事は都庁で取材に「コロナに感染された心のケアが必要だと強く感じた。どのような改善策があるか、よく検討していきたい」と話した。〉
 まことに痛ましい事例で言葉を失うが、「コロナに感染することは、あるまじきことであり、特に(無症状のまま)《他人にうつすこと》が許されない」という意識が、蔓延していることが分かる。この家族は4人中3人が感染したが、いずれも「無症状」だったようだ。それは《発病していない》ということであり、本来なら《喜ばしい》ことのはずなのに、なまじ無症状である故に周囲から《責められる》と感じてしまう。その「社会的構図」が、コロナ禍(人災)の《本質》ではないだろうか。その創出に大きく関わっている(危機感を煽り立てている)都知事にとってはまるで「他人事」のようで、「心のケアが必要。どのような改善策があるか、検討する」だと・・・。かけがえのない妻や母を亡くした家族にとっては、まさに「覆水は盆に還らず」なのだということを、リーダーとして思い知るべきだと、私は思う。
 ところで、この女性は「新型コロナによる死亡者」として認定されるべきなのだろうか。厚生労働省の見解をうかがいたい。 
(2021.1.23)