梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

戦後流行歌手の「実力」・《1》

梨野礫

「歌い継がれる名曲・ステレオ版・心に残る流行歌大全集」というCDがある。戦前・戦後の流行歌180曲を63人の戦後流行歌手が歌っている。その歌手の《実力》を、私の「独断と偏見」で測ってみたいと思う。その方法は以下の通りである。

 1 まずその曲を私が好きかどうか、5段階評価(大好き5 まあ好き4 普通3 嫌い2 大嫌い1)する。

  2 その歌手の歌唱力を100点満点で評価する。

  3  1と2の数値を掛けて総合点とする。(最高は5×100=500点)


その結果・1・《採点一覧》

1  大川栄策・「酒は涙か溜息か」       4×100=400点

2  畠山みどり・「侍ニッポン」       4×100=400点

3  ちあきなおみ 「ゴンドラの唄」      4×100=400点

4  松原のぶえ・「シナの夜」        3×100=300点   

5  多岐川舞子・「急げ幌馬車」             4×100=400点

6  大川栄策・「目ン無い千鳥」            4×100=400点

7  八代亜紀・「小雨の丘」                  4×50=200点

8  小林幸子・「東京ブギウギ」              3×20=60点

9   田川寿美・「東京キッド」                3×80=240点

10  ちあきなおみ・「フランチェスカの鐘」  5×90=450点

11 鮫島由美子・「水色のワルツ」           5×80=400点

12 細川たかし・「男の純情」             4×90=360点

13 大川栄策・「丘を越えて」                3×90=270点

14 田川寿美・「お祭りマンボ」            5×80=400点

15 多岐川舞子・「この世の花」            4×90=360点

16 冠二郎・「さすらい」                    3×80=240点

17 都はるみ・「花言葉の唄」                3×80=240点

18 松原のぶえ・「越後獅子の唄」           5×80=400点

《寸評》

 戦前流行歌手・藤山一郎、二葉あき子の曲を、彼ら以上の歌唱力で歌い継ぐことは至難のことと思われるが、古賀政男の最後の弟子・大川栄策は、彼独特ののメリハリのきいた歌声で、藤山一郎や霧島昇の「清純さ」「明解さ」とは異なる魅力で惹きつける。ちあきなおみは、志村喬が映画「生きる」で歌った「ゴンドラの唄」を堅実に歌いこなしている。二葉あき子の「フランチェスカの鐘」は、曲想をよく理解して歌っているが、声の質から原曲に一歩及ばない。また、鮫島由美子の「水色のワルツ」は、ソプラノ歌手の歌唱法が災いして、名曲の魅力が失われている。 

 畠山みどりの「侍ニッポン」は、中性的な空気が、徳山璉の男性的な原曲と肩を並べている。

 八代亜紀の「小雨の丘」は、彼女の独特な声が曲想にそぐわない。

  松原のぶえの「シナの夜」「越後獅子の唄」は、いずれも難曲だが、澄み切った声で誠実に歌いこなしている。

 多岐川舞子も「急げ幌馬車」「この世の花」を原曲以上に(見事に)歌い上げた。

田川寿美の「東京キッド」「お祭りマンボ」は、美空ひばり初期の弾けるような「リズム感」にはまだ及ばない。

 小林幸子の「東京ブギウギ」は、笠置シズ子が「全身全霊」で表現しているのに比べて、「口先だけで歌いこなそう」とする姿勢が窺える。

 細川たかしの「男の純情」、冠二郎の「さすらい」は、彼らの持ち歌以上の「出来映え」であった。

(2025.9.21)