梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

安倍内閣の《終息》

 共産党の大門実紀氏は28日の参院決算委員会で、「森友学園」元理事長・籠池泰典氏が安倍晋三首相の昭恵夫人付き政府職員に手紙を送り、国有地の早期買い取りを陳情していたことを明らかにした。陳情の内容は、①賃貸していた国有地を早期に買い取りたい、②賃料月200万円超は高すぎるので半額程度にしてもらいたい、③一部ごみ撤去費の早期支払いをしてもらいたい、という要望であり、その結果は、①評価額から8億円余り値引きされ買い取られた(8カ月後)、②(賃料は)購入代金の10年分割払いが認められ、月額にすると100万円ほどになった(8カ月後)、③(ごみ撤去費は)新年度の開始直後に支払われた(半年後)、ということである。大門氏は手紙による陳情の多くが実現したとして「ゼロ回答どころか満額回答だった」と強調した。これに対して菅義偉官房長官は「読んだ」と手紙の内容を確認した上で「内容からして、まさにゼロ回答だった」と強調し、首相は「(手紙を)一部しか読んでいない」と述べたそうである。(東京新聞3月29日付け朝刊・1面) 
 籠池氏の要望が叶えられているという「事実」を、菅官房長官は「ゼロ回答だった」という。「ゼロ回答」とは、籠池氏の要望が「全く通らなかった場合」をいうのであって、菅氏は「事実」を無視している。「事実誤認」に等しい。安倍首相に至っては「一部しか読んでいない」などと、白々しい言い逃れをしているだけ・・・、全く答弁になっていない。
 さらに言えば、籠池氏が証人喚問で「昭恵夫人から100万円の寄付を頂いた」と証言したことに対して、自民党は、籠池氏が学園職員が受領証に首相の名前を書き、郵便局にも行ったとすることに「籠池氏の妻だった可能性がある」と指摘、国政調査権で筆跡鑑定や聞き取りをし、偽証罪での告発も検討するとしている。菅氏も29日の会見で「協力する」と述べたそうである。(東京新聞3月30日付け朝刊・2面)
 この問題の核心は、①100万円の寄付があったか、②籠池氏と昭恵氏はどの部屋(控え室)で会ったか、③籠池氏と昭恵氏は2人だけになったか(昭恵氏は同行者に席を外させたか)、④100万円は本当に郵便局に振り込まれたか、ということである。自民党は④の偽証を疑っているようだが、「誰が振り込んだか」ということは、①、②、③に比べてさほど重要ではない。振り込んだのが籠池氏であれ、夫人であれ、職員であれ、100万円という現金が存在したことが「事実」として実証されてしまうからである。つまり、たとえ④が偽証だったとしても、そのことで①、②、③が偽証だということにはならないのである。自民党は、まず①、②、③について、籠池氏が偽証していることを告発しなければならない。100万円の寄付があったか、なかったかは「水掛け論」ではない。籠池氏、昭恵氏のどちらかが「嘘をついている」のである。その真相を究明するために、安倍首相、菅監房長官、自民党は、籠池氏を偽証罪で告発する「責任」があるのである。
 籠池氏の偽証罪が成立しなければ、安倍内閣は終息を迎えることになる。 
 同上の記事は、〈ある閣僚経験者は「官邸の圧力でやっているだけ。告発するつもりはないだろう」と指摘。自民党幹部も「問題が収束しかけているのに、また注目されてしまう」と懸念を示している〉(大野暢子)と締め括られているが、国民の注目は、安倍内閣が終息するまで収束することはない。(2017.3.30)