梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

米海軍特殊部隊「最強の狙撃手」の死

  インターネットのYahooニュースに「米海軍特殊部隊『最強の狙撃手』、テキサス州で射殺される」(ロイター 2月4日(月)8時49分配信)という見出しの記事が載っている。その内容は以下の通りであった。〈2月3日、テキサス州公安局によると、米海軍特殊部隊の元隊員で、「ネイビー・シールズ最強の狙撃手」の著者クリス・カイルさんが2日に同州グレンローズの射撃場で銃で撃たれて死亡した。写真はエディー・レイ・ルース容疑者。提供写真(2013年 ロイター/Erath County Sheriff’s Office)[3日 ロイター] 米海軍特殊部隊の元隊員で、自身のスナイパーとしての従軍体験を記した「ネイビー・シールズ最強の狙撃手」の著者クリス・カイルさん(38)が2日、テキサス州グレンローズの射撃場で銃で撃たれて死亡した。同州公安局が3日明らかにした。この事件で、警察はエディー・レイ・ルース容疑者(25)を、カイルさんとその知人(35)を殺害した容疑で逮捕した。当局によると、2人は至近距離から撃たれたという。
 特殊部隊員として160人を殺害したと告白したカイルさんは、米国で最も多くを射殺したスナイパーとされ、1999年から2009年までの軍務体験記を出版した。地元メディアによると、ルース容疑者は海軍に所属した経験があり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていたという。事件発生から数時間後に州内の自宅で逮捕された。
 米特殊作戦部隊の情報サイトによると、カイルさんはPTSDを患う元海軍兵を支援するためのボランティア活動を行っていた。この日は、元兵士らを射撃場に連れて来ていたという〉。この事件の被害者は元・米海軍の「最強の狙撃手」、加害者も元海軍の経験者でPTSDを患っていたという。両者に、どのようなトラブル、葛藤があったのか、詳細はわからない。しかし、ルース容疑者がPTSDを患っていた、カイルさんはそのような元海軍兵を支援していたとすれば、およその想像はつく。私の独断と偏見によれば、ルース容疑者は、カイルさんを、どうしても許せなかった。なぜなら、160人を殺害したにもかかわらず、PTSDを患いもせず「平然」としていたからである。加えて、未だに戦争体験のショックから立ち直れず苦しんでいる自分(達)を「支援」するだと、しかも、こともあろうに「射撃場に連れて行く」などというボランティア活動があり得るだろうか、その「無神経さ」をオレは許せない・・・。その真偽はともかく、戦争勝利国アメリカの海軍の元兵士が「同士討ち」をした事実に変わりはない。「最強の狙撃手」が、38歳の若さで味方に殺害されたのである。それは、単なる偶然ではなく、「戦争」という(人類の)愚行がもたらした必然であることを肝銘しなければならない、と私は思う。「戦争」に勝利者は存在しないのである。
(2013.2.4)