梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「やましき沈黙」を強いる正体

 東京新聞8月29日付け朝刊(29面)に「本音のコラム やましき沈黙」(中谷巌)という記事が載っている。以下はその引用である。〈今年の夏にわたしが見た最高のテレビ番組のひとつは八月九日から三夜連続で放映されたNHKスペシャル『日本海軍400時間の証言』だった。(中略)ほとんどの当事者が「対米開戦なんて無謀だ」「特攻作戦を容認したことは間違いだった」と当時を振り返って語っている。しかし、意思決定の際には、表立って反対を表明することができなかった。その理由は、当時の高揚した国民感情、戦線拡大を主張する陸軍への遠慮、血気はやる若手将校のテロにあうといった恐怖心など、反対を表明することが「タブー」になっていたからだ。多くの幹部が「まずい」「間違いだ」と思いつつ、異論をはさまなかった。ある幹部はこれを「やましき沈黙」と呼んだ。「やましき沈黙」。これは現代日本のあちこちで起こっている。(後略)〉現代日本において、〈反対を表明することが「タブー」になって〉いる案件とは何だろうか。一見すれば、「言論の自由」というお題目(空念仏)に隠れて見当たらないかもしれない。ただ、確実にいえることは(当時と共通していることは)、「テロにあうといった恐怖心」ではないだろうか。しからばそのテロリストの正体とは?当時の「若手将校」の理念を踏襲する(大和)民族主義者?国際社会と対峙する(悪の枢軸国?)イスラム原理主義?問答無用で「歓楽街」をとりしきる私設警察(右翼・暴力団)?それとも狂信的なカルト集団(たとえばオウム真理教)?はたまた、遺物化した左翼過激派ゲリラ?いずれにせよ、「平和」だとか「民主主義」だとか「話し合い」だとか、「女々しい」手段では「一銭も儲からない」ことを知っている武器製造業、武器斡旋業者(死の商人)の「手先」であることは、間違いないところであろう。はたして国民から委託された、合法的な権力(暴力)装置、たとえば自衛隊、たとえば警察に、その正体を暴き、殲滅する「実力」と「見識」があるだろうか。前空幕長(お調子者)の(軽薄な)言動などから推し量ると、もしかして、まず真っ先に自分たちが、その「手先」を務めたりなんかしちゃって・・・。笑い話にもなりはしない。事態は、ことほどさように、「深刻さ」を増しているのである。(2009.8.30)