梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

安部元首相の横死

 安倍元首相はなぜ殺されたのか。犯人は「母親が宗教団体にのめり込んで多額の寄付をし、恨みがあった。団体と元首相がつながっていると思ったから狙った」という趣旨の供述をしているという。(東京新聞7月10日付け朝刊・1面)
 だとすれば、安部元首相は犯人の「私怨」によって殺されたことになる。政治信条とは無縁の次元で、また「民主主義の根幹」「言論の自由」ともかかわりなく、犯人の「個人的な恨み」によって殺された。不本意と言えば不本意、オソマツと言えばオソマツな「死」であった。
 「人は生きたように死んでいく」とはよく言われることだが、安倍元首相もまた、その「生き様」のように死んでいった。彼の「生き様」を一言すれば《公私混同》、それが多くの疑惑を招いたが、今回もまた「宗教団体とのつながり」が犯人によって指摘されている。その「つながり」の是非(有無)はともかく、そのように思われる言動が悲劇を招いたことはたしかである。警備体制の不備よりも、安部氏自身の「危機管理」に隙(油断)があったとしかいいようがない。まことに後味の悪い事件であった。
(2022.7.10)