梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・幕間閑話・季節は冬、がんばれ「劇団・火の車」!

インターネットに「0481.jpからのお知らせ」という記事が載っている。その内容は以下の通りであった。〈皆様こんにちは。いよいよ年末も差し迫って参りました。 皆様、いかがお過ごしでしょうか。年末商戦の真っ直中に選挙があり、北朝鮮はミサイルを発射すると云っているし、勘三郎さんは亡くなってしまった。なんか、世の中の歯車が狂っています。そんな中、劇団の公演先も一つずつ閉館していく今日この頃、大衆演劇界も冬を迎えています。需要と供給のバランスが崩れて来ています。公演先が減る一方で、劇団数は増えずとも現状維持の状況。当然に、休演する劇団が出てきます。休演を避けるための安売りをしたのでは、出演料のバランスまで崩れて劇団経営が成り立たなくなってしまう。数ある劇団の中でも、各公演先に引っ張りだこの劇団は一割程度。各、興業社は頭を痛めています。劇団も、人気を得て話題となるようより一層努力し、興行師も将来を見据えて劇団を育て、公演先を一つでも多く開拓していく努力をしなければなりません。ひと昔前のように、待っているだけの時代はとうに終わっているのです。そう感じて、0481.jpを起ち上げました。0481.jpがあることによって少しでも大衆演劇が話題となり、新しい公演先が一つでも増え活性化のお役に立てれば幸いと思っております。0481.jpをご利用の皆様、大衆演劇を利用したイベントをどうぞ企画してください。0481.jpのTOPページにある「お問い合わせ」から連絡をください。または、下記まで連絡をお願いいたします。〉(以下略)
(2012.12.8)。
 私が、大衆演劇を初めて観たのは、昭和46年(1971年)。爾来40余年が経過したことになる。この間、若葉しげる、深水志津夫、旗丈司、松川友司郎、五月直次郎、見海堂駿、辻野光男、梅沢武生、金井保、長谷川正二郎、若水照代、大日向満、大導寺はじめ、見城たかし、東千之介、辻野耕輔、山口正夫、里見要次郎、沢村千代丸らの時代を経て、都若丸、市川千太郎、小泉たつみ、近江飛龍、姫京之助、筑紫桃太郎、南條隆、樋口次郎、三河家桃太郎、桜京之介、寿美英二、かつき夢二、龍千明、松丸家小弁太、春川ふじお、荒城真吾、玄海竜二、沢竜二、大川竜之助、藤間智太郎、鹿島順一・・・(数え上げればきりがない)らの舞台を見聞してきた。筆者いわく〈大衆演劇界も冬を迎えています。需要と供給のバランスが崩れて来ています。公演先が減る一方で、劇団数は増えずとも現状維持の状況。当然に、休演する劇団が出てきます。休演を避けるための安売りをしたのでは、出演料のバランスまで崩れて劇団経営が成り立たなくなってしまう。数ある劇団の中でも、各公演先に引っ張りだこの劇団は一割程度〉。おっしゃる通り!だがしかし、私の独断と偏見によれば、大衆演劇界は、つねに「冬」でなければ意味がない。〈冬枯れの野べとわが身を思ひせば燃えても春を待たましものを(伊勢・古今791)〉という古謡もあるではないか。
 今、全国各地では「恒例」の座長大会が行われている。例えば、①九州演劇協会 定例座長大会■開催日時2012年12月7日(金)■場所 ユーユー・カイカン■料金指定S席8,000円指定A席6,500円指定B席5,000円※当日券は+500円、②おぐら座 定例座長大会■開催日時2012年12月10日(月)■場所おぐら座■料金S席 8,000円 A席7,000円昼夜S+S席14,000円昼夜S+A席13,000円昼夜A+A席12,000円、③澤村心座長襲名5周年・澤村かずま座長襲名座長大会■開催日時2012年12月14日(金)■場所 新開地劇場■料金前売指定7.000円当日8,000円自由6,000円、④和・一信会 友情特別公演■開催日時2012年12月14日(金)■場所羅い舞座 京橋劇場 ■料金前売指定3,000円 当日指定 3,500円、⑤同魂会年末座長大会■開催日時2012年12月14日(金)■場所博多新劇座 ■料金A席6,500円B席6,000円C席5,50円・・・。  いずれも、入場料金は「通常」の、2~5倍以上、もはや「大衆」(私)の「入る幕」はないのである。「需要と供給」のバランスが「価格」で決まる(保たれる)のは経済の常識、金満家の客筋ばかり当てにすれば、需要が減るのは当然であろう。「大衆演劇」の神髄は《低料金で「もどき」の芸が観られること》、今日もまた、20名そこそこの観客を相手に、渾身の力を振り絞って「芸道に精進する」劇団がある。そしてまた、そうした劇団を引っ張る(稀有な)「公演先」(芝居小屋)も、(わずかながらに)あることを、私は信じて疑わない。たしかに、今は「冬」、しかし、多くの先達が蒔かれた(珠玉の)種は、したたかに芽生え、「冬牡丹」(個人舞踊)のような名花を咲かせているのだ。がんばれ大衆演劇!そして、劇団「火の車」!
(2012.12.14)