梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・劇団素描「劇団菊太郎」(座長・梅沢菊太郎)

【劇団菊太郎】(座長・梅沢菊太郎)〈平成20年7月公演・佐倉湯パラダイス〉
 「劇団紹介」のパンフレットがないので、「演劇グラフ」(2008年2月号)から、プロフィールを引用すると以下の通りである。〈劇団菊太郎 演友会所属。梅沢菊太郎座長が「劇団鷹の羽」から2006年5月に独立旗揚げ、2007年で一周年を迎えた。父・梅沢菊弥(「劇団鷹の羽」)から受け継いだお芝居と梅沢菊太郎座長のオリジナル狂言を中心に、時に人情芝居で楽しませてくれる。舞踊では連日行われている組舞踊に特にこだわり、スーパー歌舞伎の演出家にも指導を仰ぐほど。またそのこだわりは、芝居の大道具や照明などの舞台に及ぶ。 座長・梅沢菊太郎 昭和51(1976)年11月4日生まれ。山形県出身。血液型O型。上演する芝居は父・梅沢菊弥(「劇団鷹の羽」)から受け継いだお芝居と座長自身のオリジナル狂言。特に人情芝居を得意とする。組舞踊にもこだわっており、スーパー歌舞伎の演出家の指導のもと、連日稽古に余念がない。そのサービス精神旺盛な舞台に人気が集まっている〉
 芝居の外題は、昼の部「ちびっこ忠治御用旅」、夜の部「人生晴れたり曇ったり」。前者は、「山形屋の場」を中心に、忠治を5歳の子役(玉太郎?光太郎?)が演じるという趣向、後者は「文七元結」の〈宮大工版〉とでもいおうか、出来栄えは「水準」並み、座長の「実力」に脇役がついて行けず、座長一人が「浮き上がり気味」という景色であった。座員は、座長の妻・梅沢かおり、若手・梅沢星明、梅沢道矢、女優・梅沢七海、梅沢北斗、梅沢あすか、梅沢さくら、梅沢ひとみ、梅沢たえみ、梅沢舞華、子役・玉太郎、光太郎、涼太郎と大勢だが、座長と対等に渡り合える(絡み合える)のは、妻の梅沢かおりくらいであろう。「人生晴れたり曇ったり」では、座長とその女房役の「絡み」が、ともすれば「楽屋落ち」に偏りがち(それはそれなりに面白いのだが)で、登場人物本来の滑稽さ(特に、女房のしたたかさと可愛らしさ)が十分に描出できずに終わったのは、誠に残念であった。
(2008.7.10)