梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・劇団素描「劇団天華」(座長・澤村千夜)

【劇団天華】(座長・澤村千夜)〈平成21年5月公演・ゆうパークおごせ〉
 劇団紹介」によれば〈プロフィール 劇団天華 平成20(2008)年2月に、澤村千夜座長がヘルス共和国Z(広島県)にて旗揚げ。劇団名は「やるからには一番をめざして」という座長の思いが込められている。座長を中心に若手、ベテランが力を合わせ日々稽古に励んでいる。座長 澤村千夜(さわむらせんや)昭和48(1973)年10月22日生まれ。愛媛県出身。血液型B型。「千代丸劇団」(澤村千代丸座長)、「劇団紀伊国屋」に在籍し、端正な容貌を生かした二枚目、クールな仇役、三枚目など芸域を広げてきた。平成20(2008)年、ヘルス共和国Z(広島県)にて「劇団天華」を旗揚げ。劇団名には「やるからには一番を目指して」という思いが込められている〉とある。また、キャッチフレーズは、〈天下に咲き誇る一番美しい華になる。志高く、無限の可能性に挑む。「千代丸劇団」「劇団紀伊国屋」で芸の腕を磨いた男伊達・澤村千夜が独立旗揚げ。澤村千夜座長を筆頭に劇団が一丸となって、繰り広げる情熱舞台を感じてください〉であった。さて、この劇場、観劇料金は「別勘定」のためか(しかも客席の前半分は「さらに有料」の指定席)、日曜・昼の部だというのに、客席は閑散としている。開幕時の客数は十数名にすぎなかった。そんな中で、芝居の外題は「二人忠治」。赤城の山で「下働き」をしていた百姓が、国定忠治の「名を騙って」無銭飲食を繰り返すうち、本物の忠治に遭遇、馬脚をあらわすという筋書で、喜劇の中の喜劇、劇場の空気は「笑いの渦」であふれるはずであったが、残念ながら客数不足が致命的、客は(恥ずかしやら、むなしいやら)笑い声を「押し殺して」観る始末。劇団の「実力」は「水準並み」だが、劇場の「集客能力」が及ばず、不完全燃焼気味の舞台であった、といえよう。劇団員(キャスト)は、副座長・澤村神龍(舞踊の実力は「水準」以上)、ベテラン・アスカコウジロウ、女優・サンジョウナツキ、男優二人、子役一人(いずれも芸名不詳)で、合計7名(?)。旗揚げしてまだ1年、「発展途上」の「初々しさ」を生かして〈日々の稽古に励め〉ば、必ずや「美しい華」に結実化するだろう。「役者は揃っている」。たった数名の客であっても、「大入り」のつもりで舞台を務められるかどうか、そのことが〈志高く、無限の可能性に挑む〉「鍵」(キーポイント)になるだろう。
(2009.5.15)