梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・劇団素描「劇団花車」(座長・姫京之助、姫錦之助)

【劇団花車】(座長・姫京之助・姫錦之助)〈平成21年2月公演・浅草木馬館〉
 劇団紹介によれば、〈プロフィール 劇団花車 九州演劇協会所属。昭和61(1986〉年、初代・姫川竜之介の長男・姫京之助が旗揚げ。劇団名は、故・藤山寛美より贈られたもの。伝統を踏まえながら、常に時代の流れを敏速にキャッチ。独自のアレンジを加え、華やかな舞台を創造し続けている。姫京之助 昭和33(1958)年7月19日生まれ。福岡県出身。血液型A型。九州演劇協会の人気役者、初代・姫川竜之助の長男。16歳で初舞台を踏む。初代・藤ひろしの劇団や藤山寛美在籍時の松竹新喜劇で腕を磨いたあと「劇団花車」を旗揚げ。「お客様がもう一度観たいと思っていただけるような劇団」を目標としている。姫錦之助 昭和56(1981)年1月8日生まれ。福岡県出身。初舞台は6歳。観客を飽きさせないアイデアで舞台を楽しんでいただこうと努力し続けている。踊りのセンスは特に高く評価されている。平成19(2007)年10月、新開地劇場(兵庫県)にて座長襲名した〉とのことである。またキャッチフレーズは、〈個性で魅せる大衆演劇界のサラブレッド劇団 座長 姫京之助とその長男である座長 姫錦之助の輝く二枚看板。次男・姫猿之助、三男・姫勘九郎、四男・姫右近も唯一無二の個性で魅せる。流行と感性を斬新に取り入れた舞台に注目が集まる〉であった。 
 私が初めてこの劇団を見聞したのは、平成19年5月ころであったか、十条篠原演芸場の舞台であった。なるほど「お客様がもう一度観たいと思っていただけるような劇団」であることは間違いない。キャッチフレーズどおり、父・京之助、長男・錦之助、次男・猿之助、三男・勘九郎、四男。右近の「風情」「芸風」はまさに「唯一無二」、個性的な魅力で輝いている。それだけに、(劇団の将来を考えれば無理からぬこととはいえ)父・京之助と長男・錦之助を「二枚看板」にすることは、いかがなものだろうか。父の「重厚さ」、長男の「華麗さ」、次男の「外連味」、三男の「飄然」、四男の「初々しさ」が結集してこそ、「大衆演劇界のサラブレッド劇団」が実現できるのだ、と私は思う。劇団の特徴は、全体としては「華やか舞台」が「売り」。化粧・衣装(着物)はもとより、履き物、小物、鬘、簪に至るまで「微に入り細に入り」「「金をかけている」。それらを、最大限に「披露」するためか、「早変わり」の技も、お見事。舞台の力点は、「芝居よりも舞踊ショー」におかれている。前宣伝の張り紙も、ほとんどが「舞踊ショー」の演目であることからも、そのことが窺われる。したがって、芝居の舞台は低調、外題は「○○○の林蔵」。大衆演劇の定番で、主役・座長、「二枚目」・錦之助、「三枚目」(敵役)・猿之助という配役であったが、「客との呼吸の合わせ方」が「今一歩」で「月並みな」出来栄えになってしまった。今回の公演には、なぜか三男・勘九郎が「不参加」、ポッカリと穴が開いてしまった感がある。前回の舞台では、「やる気があるのか、ないのかわからない」勘九郎の「飄々とした」風情が、芝居の中で「えもいわれぬ」魅力を醸し出していたのだが・・・。
 いずれにせよ、今回もまた「もう一度観たい」と思うかどうか、現状でははっきりしない。
(2009.2.19)