梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「旧約聖書」通読・《創世記》・第50章

■第50章
・ヨセフは父の顔に伏して泣き、口づけした。そしてしもべである医者たちに、父に薬を塗ることを命じたので、医者たちはイスラエルに薬を塗った。このために40日を費やした。薬を塗るにはこれほどの日数を要するのである。エジプトびとは70日の間、彼のために泣いた。
・彼のために泣く日が過ぎて、ヨセフはパロの家の者に言った。「今もしわたしがあなたがたの前に恵みを得るなら、どうかパロに伝えてください。『わたしの父はわたしに誓わせて言いました「わたしはやがて死にます。カナンの地に、わたしが掘っていた墓に葬ってください」。それで、どうかわたしを上っていかせ、父を葬らせてください。そうすれば、わたしはまた帰ってきます』」。パロは言った。「あなたの父があなたに誓わせたように、上って行って彼を葬りなさい」。そこでヨセフは父を葬るために上って行った。彼と共に上った者は、パロのもろもろの家来たち、パロの家の長老たち、エジプトの国のもろもろの長老たち、ヨセフの全家とその兄弟たち及びその父の家族であった。ただ子供と羊と牛はゴセンの地に残した。また戦車と騎兵も彼と共に上ったので、その行列はたいそう盛んであった。彼らはヨルダンの向こうのアタデの打ち場に行き着いて、そこで大いに嘆き、非常に悲しんだ。ヨセフは7日の間父のために嘆いた。その地の住民、カナンびとがアタデの打ち場の嘆きを見て、「これはエジプトびとの大いなる嘆きだ」と言ったので、その所の名はアベル・ミツライムと呼ばれた。これはヨルダンの向こうにある。ヤコブの子らは命じられたようにヤコブにおこなった。その子らは彼をカナンの地へ運んで行って、マクベラの畑のほら穴に葬った。このほら穴はマムレの東にあって、アブラハムがヘテびとエフロンから畑と共に買って、所有の墓地としたものである。ヨセフは父を葬った後、一緒に上った者と共にエジプトへ帰った。
・ヨセフの兄弟たちは父の死んだのを見て言った。「ヨセフはわれわれを憎んで、われわれが彼にしたすべての悪に、仕返しするに違いない」。そこで彼らはことづけしてヨセフに言った。「あなたの父は死ぬ前に命じて言われました。『おまえたちはヨセフに言いなさい。「あなたの兄弟たちはあなたに悪をおこなったが、どうかそのとがと罪をゆるしてやってください』。今どうかあなたの父の神に仕えるしもべらのとがをゆるしてください」。ヨセフはこのことばを聞いて泣いた。やがて兄弟たちもきて、彼の前に伏して言った。「このとおり、わたしたちはあなたのしもべです」。ヨセフは彼らに言った。「恐れることはいりません。わたしが神に代わることができましょうか。あなたがたはわたしに対して悪をたくらんだが、神はそれを良きに変わらせて、今日のように多くの民の命を救おうと計らわれました。それゆえ恐れることはいりません。わたしはあなたがたとあなたがたの子供たちを養いましょう」。彼は彼らを慰めて、親切に語った。
・このようにしてヨセフは父の家族と共にエジプトに住んだ。そしてヨセフは110年生きながらえた。ヨセフはエフライムの三代の子孫を見た。マナセの子マキルの子らも生まれてヨセフのひざの上に置かれた。ヨセフは兄弟たちに言った。「わたしはやがて死にます。神はかならずあなたがたを顧みて、この国から連れ出し、アブラハム、イサク、ヤコブに誓われた地に導き上られるでしょう」。さらにヨセフは、「神は必ずあなたがたを顧みられる。その時、あなたがたはわたしの骨をここから携えて上りなさい」と言ってイスラエルの子らに誓わせた。こうしてヨセフは110歳で死んだ。彼らはこれに薬を塗り、棺に納めて、エジプトに置いた。
(2021.10.22)