梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「旧約聖書」通読・《創世記》・第32章

■第32章
・さて、ヤコブが旅路に進んだとき、神の使いたちが彼に会った。ヤコブは彼らを見て、「これは神の陣営です」と言って、その所の名をマハナイムと名づけた。
・ヤコブはセイルの地、エドムの野に住む兄エサウのもとに使者をつかわし、命じて言った。「あなたがたはわたしの主人エサウにこう言いなさい。『あなたのしもべヤコブはこう言いました。わたしはラバンのもとに寄留して今までとどまりました。わたしは牛、ろば、羊、男女の奴隷を持っています。それであなたの前に恵みを得ようと人をつかわしたのです』。
・使者はヤコブのもとに帰って言った。「わたしたちはあなたの兄エサウのもとに行きました。彼もまたあなたを迎えようと400人を率いてきます」。そこでヤコブは大いに恐れ、苦しみ、共にいる民および羊、牛、らくだを二つの組に分けて、言った。「たとい、エサウがきて、一つの組を撃っても、残りの組はのがれるであろう」。
・ヤコブはまた言った。「父アブラハムの神、父イサクの神よ。『おまえの国へ帰り。おまえの親族に行け。わたしはおまえを恵もう』と言われた主よ、あなたがしもべに施されたすべての恵みとまことをわたしは受けとるに足りない者です。わたしは、つえのほかに何も持たないでこのヨルダンを渡りましたが、今は二つの組にもなりました。どうぞ兄エサウの手からわたしをお救いください。彼がきて、わたしを撃ち、母や子どもたちにまで及ぶのを恐れます。あなたはかつて『わたしは必ずおまえを恵み、おまえの子孫を海の砂の数えがたいほど多くしよう』と言われました」。
・彼はその夜そこに宿り、持ち物のうちから兄エサウへの贈り物を選んだ。雌やぎ200、雄やぎ20,雌羊200,雄羊20,乳らくだ30とその子、雌牛40,雄牛10,雌ろば10,雄ろば10。彼はこれらをそれぞれの群れに分けて、しもべたちの手にわたし、しもべたちに言った。「あなたがたはわたしの先に進みなさい。そして群れと群れの間には隔たりをおきなさい」。また先頭の者に命じて言った。「もし兄エサウがあなたに会って『だれのしもべでどこへ行くのか。あなたの前にあるこれらのものはだれの物か』と尋ねたら、『あなたのしもべヤコブの物で、わが主エサウにおくる贈り物です。彼もわたしたちのうしろにおります』と言いなさい」。彼は第二の者にも、第三の者にも、また群とれ群れについて行くすべての者にも命じて言った。「あなたがたがエサウに会うときは、『あなたのしもべヤコブはわれわれのうしろにおります』と言いなさい」。ヤコブは、「わたしがさきに送る贈り物をもってまず彼をなだめ、それから彼の顔を見よう。そうすれば彼はわたしを迎えてくれるであろう」と思ったからである。こうして贈り物は彼に先立って渡り、彼はその夜、宿営に宿った。
・彼はその夜起きて、ふたりの妻とふたりのつかえめと11人の子どもとを連れてヤボクの渡しをわたった。彼らを導いて川を渡らせ、彼の持ち物を渡らせた。ヤコブはひとりあとに残ったが、ひとりの人が、夜明けまで彼と組み打ちした。その人はヤコブに勝てないのを見て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコブのもものつがいが、その人と組み打ちする間にはずれた。その人は言った。「夜が明けるからわたしを去らせてください」。ヤコブは答えた。「わたしを祝福してくださらないなら、あなたを去らせません」。その人は彼に言った。「あなたの名はなんと言いますか」。彼は答えた。「ヤコブです」。その人は言った。「あなたはもはやヤコブとは言わず、イスラエルと言いなさい。あなたが神と人とに、力を争って勝ったからです」。ヤコブは尋ねて言った。「どうかわたしにあなたの名をしらせてください」。するとその人は、「なぜわたしの名をきくのですか」と言ったが、その所で彼を祝福した。そこでヤコブはその所の名をペニエルと名づけて言った。
「わたしは顔と顔をあわせて神を見たが、なお生きている」。こうして彼がペニエルを過ぎる時、日は彼の上にのぼったが、かれはそのもものゆえにびっこを引いていた。そのため、イスラエルの子らは今日まで、もものつがいの上にある腰の筋を食べない。かの人がヤコブのもものつがい、すなわち腰の筋にさわったからである。
(2021.10.3)