梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「旧約聖書」通読・《創世記》・第24章

■第24章
・アブラハムは年が進んで老人となった。主はすべてのことにアブラハムを恵まれた。アブラハムは所有のすべてを管理させていた年長のしもべに言った。「あなたの手をわたしのももの下に入れなさい。わたしはあなたに誓わせる。あなたはわたしが今一緒に住んでいるカナンびとのうちから、娘をわたしの子の妻にめとってはならない。あなたはわたしの国へ行き、親族の所へ行って、わたしの子イサクのために妻をめとらなければならない」。
しもべは彼に言った。「もしその女がわたしについて来ることを好まない時は、わたしはあなたの子をあなたの出身地に連れ帰るべきでしょうか」。アブラハムは言った。「わたしの子は決して向こうへ連れ帰ってはならない。天の神、主はおまえの子孫にこの地を与えると言われた。主は、み使いをあなたの前につかわされるであろう。あなたはあそこからわたしの子に妻をめとらねばならない。その女があなたについてくることを好まないなら、あなたはこの誓いを解かれる。ただわたしの子を向こうへ連れ帰ってはならない」。しもべは手を主人アブラハムのももの下に入れ、このことについて彼に誓った。
・しもべは主人のらくだのうちから10頭のらくだを取って出かけた。主人のさまざまの良い物を携え、アラム・ナハライムにむかい、ナホルの町へ行った。彼は、らくだを町の外の、水の井戸のそばに伏させた。時は夕暮れで、女たちが水を汲みに出る時刻であった。彼は言った。「主人アブラハムの神よ、主よ、きょうわたしにしあわせを授け主人アブラハムに恵みを施してください。わたしは泉のそばに立っています。町の娘たちが水を汲みに出てきたとき、娘に向かって『お願いです。あなたの水がめを傾けてわたしに水をのませてください』と言い、娘が答えて『お飲みください。あなたのらくだにも飲ませましょう』と言ったなら、その者こそ、あなたがしもべイサクのために定められた者ということにしてください。わたしはこれによって、あなたがわたしの主人に恵みを施されることを知りましょう」。
・彼がまだ言い終わらないうちに、アブラハムの兄弟ナホルの妻ミルカの子ベトエルの娘リベカが、水がめを型に載せて出てきた。その娘は非常に美しく、男を知らぬ処女であった。彼女が泉に降りて、水がめを満たし、上がってきた時、しもべは走り寄って「お願いです。あなたの水がめの水を少し飲ませてください」。すると彼女は「わが主よ、お飲みください」と言って、彼に飲ませた。飲ませ終わって、彼女は言った。「あなたのらくだもみな飲み終わるまで、わたしは水をくみましょう」。彼女は再び水を汲みに井戸に走って行って、すべてのらくだのために水を汲んだ。その間、その人は主が彼の旅を祝福されるかどうかを知ろうと、黙って彼女を見つめていた。
・らくだが飲み終わっとき、その人は重さ半シケルの金の鼻輪一つと、十シケルの金の腕輪二つを取って言った。「あなたはだれの娘か。あなたの父の家にわたしどもの泊まる場所がありましょうか」。彼女は言った。「わたしはナホルの妻ミルカの子ベトエルの娘です」。また言った。「わたしどもには、わらも、飼葉もたくさんあります。また泊まる場所もあります」。その人は頭を下げ、主を拝して、言った。「主人アブラハムの神、主はほむべきかな、主はわたしの主人にいつくしみと、まこととを惜しまれなかった。主は旅にあるわたしを主人の兄弟の家に導かれた。
・娘は走って行って、母の家のものにこれらの事を告げた。リベカにはひとりの兄がいて、名をラバンと言った。ラバンは泉のそばにいるその人の所へ走って行った。彼は鼻輪と妹の手にある腕輪を見、また妹リベカが「その人はわたしにこう言った」というのを聞いて、その人の所に行ってみると、その人は泉のほとりで、らくだのそばに立っていた。そこでその人に言った。「主に祝福された人よ、おはいりください。わたしは家を準備し、らくだにためにも場所を準備しておきました」。その人は家に入った。ラバンはらくだの荷を解いて、わらと飼葉を与え、、また水を与えてその人の足と、従者たちの足を洗わせた。そして彼の前に食物を供えたが、彼は言った。「わたしは用向きを話すまでは食べません」。ラバンは言った。「お話しください」。
・そこで彼は言った。「わたしはアブラハムのしもべです。主はわたしの主人を大いに祝福して、大いなる者とされました。主はまた彼に羊、牛、銀、金、男女の奴隷、らくだ、ろばを与えられました。主人の妻サラは年老いてから男の子を産みました。主人はその所有を皆これに与えました。ところで主人はわたしに誓わせて言いました。『わたしの住んでいる地のカナンびとの娘を、わたしの子の妻にめとってはならない。おまえはわたしの父の家、親族の所へ行って、わたしの子に妻をめとらなければならない』。《略》
・わたしはきょう、泉のところにきて言いました。『主よ、どうか今わたしのゆく道にさいわいをあたえてください。わたしは泉のそばに立っていますが、水を汲みに出てくる娘に向かって「あなたの水がめの水を少し飲ませてください」と言い「お飲みください、あなたのらくだのためにも汲みましょう」とわたしに言うなら、その娘こそ、主がわたしの主人の子のために定められた女ということにしてください』。
・わたしが心のうちでそう言い終わらないうちにリベカが水がめを肩に載せて出てきて、泉に降りたので、わたしは『お願いです。水を飲ませてください』と言いますと、彼女は『お飲みください。あなたのらくだにも飲ませましょう』と言いました。《略》
・あなたがたが、もしわたしの主人にいつくしみと、まことを尽くそうと思われるなら、そうとわたしにお話しください。そうでなければそうでないとお話しください。それによってわたしは右か左に決めましょう」。
・ラバンとベトエルは答えて言った。「この事は主から出たことですから、わたしどもはよしあしを言うことはできません。リベカがここにおりますから連れて行って、主が言われたように、あなたの主人の子の妻にしてください」。
・しもべは彼らの言葉を聞いて、地に伏し、主を拝した。そして、しもべは銀の飾りと、金の飾り、衣服を取り出してリベカに与え、兄と母とにも値の高い品々を与えた。彼と従者たちは飲み食いして宿ったが、あくる朝彼らが起きた時、しもべは言った。「わたしを主人のもとに帰らせてください」。リベカの兄と母は言った。「娘は数日、10日、わたしどもと共にいて、それから行かせましょう」。しもべは彼らに言った。「主はわたしにさいわいを与えられましたから、わたしを引き留めずに、主人のもとに帰らせてください」。彼らは言った。「娘を呼んで聞いて見ましょう」。彼らはリベカを呼んで言った。「あなたはこの人と一緒に行きますか」。彼女は言った。「行きます」。そこで彼らは妹リベカと、そのうばと、アブラハムのしもべと、その従者とを送り去らせた。彼らはリベカを祝福して彼女に言った。「妹よ、あなたはちよろずの母となれ。あなたの子孫はその敵の門を打ち破れ」。
・リベカは侍女たちとらくだに乗り、その人に従って行った。しもべはリベカを連れて立ち去った。
・イサクはベエル・ラハイ・ロイからきてネゲブの地に住んでいた。イサクは夕暮、野に出て歩いていたが、ラクダの来るのを見た。リベカはイサクを見、らくだからおりて、しもべに言った。「わたしたちに向かって、野を歩いてくるあの人は誰でしょう」。しもべは言った。「あれはわたしの主人です」。するとリベカは、被衣で身をおおった。しもべは自分のしたことのすべてをイサクに話した。イサクはリベカを天幕に連れていき、めとって妻とし、彼女を愛した。こうしてイサクは母の死後、慰めを得た。
(2021.9.25)