梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・14《Q 新型コロナに対して厳しい国境封鎖やロックダウンは有効だったのでしょうか?》

《Q&A》
Q 新型コロナに対して厳しい国境封鎖やロックダウンは有効だったのでしょうか?
A・大阪府の6月の「新型コロナウィルス対策専門家会議」で、大阪大学の中野貴志教授が「データを見る限り営業自粛や外出制限と感染拡大との間に相関性はない」と明言し、その後の分析でもその正しさが確認されている。
・大半が無症状で感染力の強いウィルスを完全に排除することは、実質的に不可能であり
国境封鎖やロックダウンの有効性が世界的に見直されつつある。


Q スウェーデンでは、高齢者を集中的にケアし、厳しいロックダウンや自粛をしませんでしたが、その結果はどうなりましたか?
A・スウェーデンでは、基礎疾患のある人、高齢者を集中的にケアし、病床数をつねに3割程度空け続け医療崩壊を防ぐ緩やかな方針を貫いた。結果的には、米国やEUのスペイン、イタリア、イギリスと同程度の死者を出し、隣国のノルウェーやフィンランドより多くの死者が出た。死亡者の大半は高齢者施設の入居者だった。従業員の約30%はパート従業員であり、体調不良で休むと賃金がカットされるので、無症状や軽症の感染者も休まずに勤務し続けて、施設内感染を拡大させた。
・スウェーデン政府の情報開示は透明度が高く、主席疫学者が定時記者会見で毎回厳しい質問に答えながら「次に大きな波が来ても同じ対策を実施する」と国民に方針を説明している。6月には集団免疫が獲得されたことを報告し、国民の大半はその結果を納得して受け止めている。


Q 感染予防には「3密回避」が重要と言われていますが、これは本当でしょうか?
A・潜伏期間が短く、飛沫感染が主な感染経路のインフルエンザなどでは、「3密回避」が有効な対策になる。しかし、ドアノブや便座などのモノを介して感染するコロナでは、3密回避の効果は極めて限定的だ。
・弱毒株への適度な暴露は集団免疫力を強化し、逆に過度の自粛などはその獲得にブレーキをかける。無症状のPCR陽性者の増加に対して過剰反応せず、有病者や高齢者を集中ケアすることが「次の波」への現実的対応として大切だ。


Q 感染を抑えるためとして日本で実施された「接触8割減」は、本当に有効だったのでしょうか?
A・新型コロナは桜の季節とともに自然に収束した。大阪大学の中野貴志教授が提唱した「K値」による数理解析では、強毒株によって死者が出た第2波の感染ピークは3月末に過ぎており、4月には激減していた。5月連休明けには実効再生産数が0.3で、感染は実質的に収束していた。
・休校措置、3密回避、緊急事態宣言、東京アラート、営業自粛などは“壮大な空振り”であり、ウィルスに対する恐怖心を煽って未だに経済的混乱を深刻化させている。
・春の新型ウィルス収束の本当の立役者は、日本人が獲得した集団免疫力だった。


【感想】
・新型コロナウィルスの感染を抑えるために「3密回避」「接触8割減」「自粛」といった対策はほとんど効果が見られなかった、ということである。
・そうした対策をとらなかったスウェーデンでは、死者は高齢者施設で多く発生し、ノルウェーやフィンランドを大きく上回ったが、国境封鎖、ロックダウンした国に比べて多いということはなかった。死者が多く出た原因として、施設従業員(パート)が感染し、そのまま勤務を続けたため、施設内の感染が拡大したと指摘されている。
・「スウェーデン政府の情報開示は透明度が高」いので、そのような結果がすぐに明らかになったのだろう。
・日本政府の情報開示は、厚生労働省のホームページで「事務的に」数値の羅列だけで行われている感じがする。だから、現状の把握や今後の見通しが全くわからない。首都圏の緊急事態宣言が「1か月間」だというのも、なぜ1か月なのか、根拠が示されていないので理解できない。もし1か月後、事態が変わっていなかったら「その時はその時考える」といった「場当たり的」「姑息な対策」としか、私には思えない。
(2021.1.11)