梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・9《「コロナの波」は日本に2回来ていた!》

■「コロナの波」は日本に2回来ていた!
・新型コロナウィルスの変異株の種類は6000種類以上にのぼるが、大別すると弱毒株(S型やK型)と強毒株(L型やG型)に分類できる。当初のウィルスはS型弱毒株だったが、途中で弱毒のK株や、L型、G型と呼ばれる強毒変異株が現れた。この4種類の株がどのように入ってきたかによって、世界の被害状況が大きく左右されることになった。
・ヨーロッパには、最初から強毒株が入っており、これがイタリア、スペイン、イギリスおよびアフリカなどでの惨状を引き起こした。
・アメリカでは初めに西海岸を中心に弱毒株が上陸し、その後、ニューヨークなどにいきなり強毒株が入って被害が拡大した。
・一方、アジアでは最初に弱毒株の感染の山が見られ、その後に強毒株の山が訪れた。
・日本では2月頃までにS型とK型の弱毒株が蔓延し、2月末にはそれがいったん収束した。欧米から日本人が帰国した3月上旬には国内の死者はまだ1桁台だったが、3月中旬にかけて死者が徐々に増え始めた。したがって、厳密には2月のS型やK型の弱毒株による流行が日本における第1波であり、3月以降のL型やG型と呼ばれる強毒株の流行が第2波であった。次にくる波が第3波ということになる。
・しかし、世間では2月と3月をまとめて「第1波」と呼んでいる。
・いずれにせよ、日本には1~2月に新型コロナウィルスの弱毒株が入り、その後の2~3月に強毒株が入ってきたことは明らかだ。これは大変重要な順番である。


■日本のコロナ感染は収束していた
・感染症では「1人の感染者が何人に感染させるか」を示す「基本再生産数」という古典的指標がよく用いられる。1よりも大きければ感染が拡大しており、小さければ収束していることを意味する。 
・5月連休明けの基本再生算数は0.34という数値だった。
・しかし、政府や専門家会議は「自粛を緩めると感染爆発が起こるので、まだ油断すべきではない」と思い込み、緊急事態宣言を5月末まで延長することを決定した。これによって、日本社会は経済的に深刻な窒息状態となり、とくに小規模事業者は死活問題に直面することになった。


【感想】
・日本にはまず中国から弱毒株のS型、次にK型が入って蔓延していたので、その後にヨーロッパから強毒株のL型、G型が入っても、K型の「集団免疫」により被害が拡大することを抑えられたという説は、なぜ日本の被害が欧米に比べて少ないかという「ファクターX」への回答としては、たいへんわかりやすい。しかし、この説が為政者、専門家、メディアによって採りあげられることはなかった。なぜだろうか。
・著者は「第1~2波」は5月初旬にはすでに収束していた、としている。では「次の波」はいつから来ているのだろうか。7月が「第3波」、11月からが「第4波」と考えてよいのだろうか。ウィルスは変異を重ねるたびに弱毒化していくといわれるが、年末から年始にかけての感染拡大はどのような変異株によるものだろうか。それが判明するのはいつのことだろうか。疑問は増すばかりである。
(2021.1.6)