梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・2《序章》

《序章》(要点)
■未知ウィルスとの出会い
・今回のコロナウィルスは、人類が初めて出会う新型の変異ウィルスだったので、いつどんな事態になるのか、誰も正確に予測することはできなかった。そのため、最初は慎重に対応する必要があったが、今では新型ウィルスの特色や患者の症状も明らかになってきた。・未体験の新興感染症では、朝令暮改的対応も必要なことが多い。固定観念にとらわれず、フレキシブルに対応することが大切だ。
・日本の実態は、冷静で科学的な視点よりも、メディアが流す情報に翻弄されてきた。
■蔓延したのは過剰反応と思考停止だった。
・“感染者数”とは、きわめて不正確であやふやな数字だ。
・メディアは重症者であふれかえる(ヨーロッパ、アメリカの)病院の映像ばかりを連日映し出したので、「日本もイタリアやニューヨークのように悲惨な状態になる」との不安が国中に蔓延し、日本全体が新型コロナに恐れおののく異様な空気に包まれていった。実際は、日本の重症者数や死者数は桁違いに少ない。
・4月7日に出された緊急事態宣言は(5月6日の時点で感染は収束しており、自粛の必要はなかったが)、5月末まで延長された。これはメディアによってすり込まれた“コロナ恐怖症”と「失敗しないことを目標にする国民性」が相乗作用し、政府や専門家が客観的なデータに基づく正常な判断ができない状態に陥ったためである。
■教訓を生かして「次の波」に正しい備えを
・「こんな異常なことを異常と思わない思考停止状態こそが、今回の騒動の最大のリスクではないのか」
・私は、世界中の最新医学情報を頼りに、約50年の研究生活で培った科学的思考法を駆使しながら、新型コロナウィルスの実像を解析し続けた。新型コロナウィルスによる被害が欧米と日本では大きく異なることから、新型コロナウィルスの実害よりもメディアが垂れ流す情報の暴走によるインフォデミック(根拠のない情報が拡散し社会が混乱すること)のほうが、人災的被害をはるかに大きくしていることを懸念し、世界と日本のコロナ情報を俯瞰的に正しく伝える活動を始めた。本書もその活動の一環として刊行するものである。・今、私たちに求められることは、この教訓を生かしてコロナの「次の波」に正しく備えながら、正常な日常生活を取り戻すことである。


【感想】
以上で「まえがき」「序論」は終わる。私自身は「新型コロナウィルス感染症」の正体がどのようなものであるか、未だによくわからない(そのような情報が行き渡っていないので)が、著者は「新型コロナウィルス」の実像を解析し、世界と日本のコロナ情報を《俯瞰的》に《正しく》理解し、伝えるということなので、たいそう興味深い。
 コロナの実害よりも「インフォデミック」による被害の方が大きく深刻だという著者の指摘には、全面的に同意できる。
(2021.1.1)