梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

新型コロナウィルス感染・「第三波」の実態・2

 東京新聞11月28日付け朝刊1面の(署名入り)トップ記事(小坂井文彦、原昌志)は「新型コロナ 死者『第2波』超す27日最多31人 重症者も最多水準」という見出しで、いかにも、「第3波」の襲来が《最悪の事態》を招く様相を呈しているかのような風潮を煽っているようであった。
 掲載されているグラフ(死者数の棒グラフと重症者数の折れ線グラフ)では、8月のピーク時よりも11月のピークの方が「際だって高い」ことが明確に示されている。加えて、御丁寧にも「個人に頼る段階過ぎた」という感染症対策分科会・尾身茂会長の談話まで添えられている。 
 この記事を目にした読者(国民)は、いったいどうすればよいのか、途方に暮れるばかりだろう。 
 ところで、この記事は、どれほどの真実を伝えているのであろうか。要点は、①死者が「第二波」のピーク時(9月4日)を超え、「第一波」のピーク時(5月2日)と同じく、最多の31人となった、②11月の死者数は285人で8月と同数に達した、③重症者は「第二波」のピーク時(8月23日)の259人から、11月26日には倍増して435人になった、ということである。だから、事態は今まで以上に深刻だ、ということがいいたいのだろう。ここで採りあげられている数値はすべて「人数」であり、要するに「どれだ増えたか、減ったか」という、小学校低学年レベルの(単純な)足し算、引き算の話である。国民の学力は小学校4年レベルといわれているので、誰もが理解できるだろう。「そうか、第三波は第一波、第二波よりも強力なのか・・・」とおびえるかもしれない。
 しかし、これらの数値を「相対的」(関係把握的)にみると、別のことがわかってくる。いわば、小学校高学年レベルの「割合計算」をするのだ。
 記事では5月2日(A)、8月23日(B)、9月4日(C)、11月26日(D)の時点での数値を示しているので、その時点における「陽性率」(陽性者数÷検査実施人数)、「入院率(患者率)」(入院治療を必要とする人数÷陽性者数)、「重症化率」(重症者数÷入院治療を必要とする人数)、「致死率」(死亡者数÷陽性者数)、「退院率」(退院者数÷入院治療を必要とする人数)を、厚生労働省のホームページで公表されている数値をもとに。見てみると・・・・。
■「陽性率」 A:8.5%  B:4.6%  C:4.5%  D:4.0%:
■「入院率」 A:76.5% B:19.2% C:12.0% D:13.6%
■「重症化率」A:2.7%  B:2.1% C:2.5%  D:2.1%
■「致死率」 A:3.2% B:1.9% C:1.8% D:1.4%
■「退院率」 A:42.4% B:408%  C:712%  D:622%
 以上の推移から、今、言えることは以下の通りである。
①「陽性率」は8%台から4%台に下降している。
②「入院率」(患者率)も76%台から10%台にまで下降している。
③「重症化率」は、2%台の「一定」で推移している。
④「致死率」は3%台から1%台に下降し続けている。
⑤「退院率」は40%台から100%以上に上昇している。
 したがって、「第三波」が、これまで以上に深刻な事態を招くということを、断定することはできない、と私は思う。
 ちなみに、報道関係者が「死者数」を採りあげるなら、「コロナを苦にした自殺者の数」「コロナ以外の病因による死者数」等も同時に採りあげて《相対的に》判断できるような材料を示してもらいたい。
(2020.11.30)