梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

マスク着用の理由

 駅西口のエレベーターに乗ると、後から一人の初老男性も飛び込んできた。彼は息を弾ませ、マスクを着けながら「いったいいつまでマスクをしなければならないんでしょうかねえ」と、私に話しかけてきた。私が無言で肯くと、「それにしても一向に収まらない、困ったもんだ」と沈んだ声で言う。今年の2月からすでに8か月、日本人は雨の日も風の日も、寒い日も暑い日も、炎天下の猛暑日にだって、マスクを着け続けてきた。
 初老男性の嘆きがひしひしと伝わってくる出来事だった。しかし、コロナ禍は「もう終わっている」。だからマスクを着ける必要はない。なぜそういえるのか。
 私は3月以来、「厚生労働省」のホームページでコロナの国内発生状況の推移を見続けてきた。「感染者数」(PCR検査陽性者数)、「入院治療等を要する者の数」、「重症者数」、「死亡者数」のグラフを見ると、陽性者数、入院治療等を要する者の数、重症者数は、5月と8月に大きな山(第一波と第二波)があり、①陽性者数、入院治療等を要する者の数は8月の方が大きく高い。②しかし重症者数は5月の方が高かった。③死亡者数は増え続けている。多くの人が①と③を見て「一向に収まらない。困ったもんだ」と溜息をついてもおかしくない。ただ、重症者数が増えていないことが明るい材料か・・・。
 だがしかし、私は「もう終わっている」と思っている。上のグラフは「不安を煽り立てる」材料にしか使われていないようだ。陽性者数の増減は意味がない。なぜならその中には「発病していない」無症状者が含まれているからである。要は「入院治療等を要する者の数」、言い換えれば「患者数」および「死亡者数」の増減に注目することである。さらに言えば、「人数」の増減ではなく、「比率」を観ることが肝要だ。「死亡者数」が(グラフで)増え続けているのは、累計を表示しているのだから当たり前、決してゼロになることはない。これを致死率(死亡者数の陽性者数に対する割合)で見ると、5月は5%を超えていたが、8月以降は2%を下回り続けている。また入院率(患者数の陽性者数に対する割合)も、5月は80%を 超えていたが8月のピークでも30%まで達していない。現在は10%未満の状態が続いている。重症率(重症者数の患者数に対する割合)にいたっては5月のピークが8%だったのに8月からは3%未満の状態が「現在まで」続いている。
 以上のことから、コロナ禍は「もう終わっている」と私は思う。これまでも、これからも「感染拡大」を抑えることはできない。大切なことは、「感染を防ぐ」ことではなく「感染しても発病しないこと」を目指すことだ。そのためには「免疫力を高める」ことが何よりも必要である。さればこそ「感染を防ぐ」ためのマスクなど「要らない」。にもかかわらず、私は今後も外出時、マスクを着けるだろう。理由はただ一点「みんなが着けているから」「仲間はずれになりたくないから」なのである。
(2020.10.23)