梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

新聞報道の《からくり》

 「東京新聞」朝刊1面に「国内感染1200人超」という大見出しの記事が載っている。そこには大阪、愛知で最多、岩手では初の感染者、また「東京都内の感染状況」などを示した表、「国内感染者の推移」の棒グラフ等が添えられている。その棒グラフを見ると、4月時の最大値が700人強だったのに対して7月29日は1200人を超えたことがわかる。どうやらこの記事は、現在の感染状況が4月よりも「深刻な状況」であることを知らせる意図があるようだ。しかし、この報道内容にはいくつかの《からくり》がある。
 まず、棒グラフの「感染者」とは《一日当たりの》《新規陽性者》のことであり、その中には、無症状者も含まれているはずだが、有症状者数は明らかにされていない。
 大事なことは、「感染者」のうち「入院治療を要する者」、すなわち「患者数」と「重症者数の推移を見ることだ。今、それを「厚生労働省」のホームページで確認すると、「患者数」のピークは4月~5月であり、最大値は12000人だったが7月のピークは《まだ》7000人程である。同様に「重症者数」の最大値は300人を超えていたが、現在は100人未満である。その事実を伝えるのが《報道の使命》ではないのか。
 また、「東京都内の感染者」の表では29日の(新規)《感染者数》250人、(現在の)《入院患者数》1106人、(現在の)《重症者数》22人と示されているが、その数が「新規」なのか「現在数」なのかは、読者(私)が想像するほかはないが、都内の入院患者は、過去の最大値1413人にはまだ至っていない。重症者数も過去の最大値105人に比べれば、5分の一程度だ。《だから》記事の意図に反して、事態はまだ「深刻な状況」ではないことがわかる。
 にもかかわらず、あえて(意味のない)「感染者数」にこだわり《深刻な状況》を捏造しようとする意図は何か。
 安倍首相は(例によって)《だんまり》を決め込み、小池都知事は相変わらず「テーヘンダ、テーヘンダ」と叫ぶばかりで、今後の予測すらおぼつかない。
 私の予想では、あと1週間(8月8日頃まで)、患者数、重症者数は増え続けるだろうが、以後は減少しはじめ、9月までには「第一波」の余波(もしくは「第二波」)は収まるだろう、ということになる。
(2020.7.30)