梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

新型コロナウィルス感染・《検証・「感染者数」》

 連日、テレビや新聞で報道されてきた《感染者数》とは、いったいどんな数字だったのか。国会で野党から尋ねられ、「専門家会議」副座長の尾見茂氏は「感染者が何人いるかは誰にもわかりません」と答えた。その時の《感染者》とは「新型コロナウィルスに感染している人」という意味であろう。国民のすべてを検査したわけではないから、当然の回答だ。では報道で公表されている《感染者》とはどういう人なのか。厚生労働省は、一貫して「陽性者数」と称してきた。5月8日までは、「陽性者数」の内訳として「有症者数」「無症者数」を示し、さらに「入院治療を要する者」を明示し、それを軽症者、重症者に分類している。5月9日以降は、「陽性者数」「入院治療を要する者」、そのうち「重症者」だけを示すようになった。なぜそうしたかは、説明されているようだが、私にはわからない。いずれにせよ、厚生労働省のホームページには《感染者》という語は見られない。では、メディアが報道する《感染者》とは何なのか。
 季節性インフルエンザの場合、「感染者」とは、《インフルエンザの患者数》である。インフルエンザを主訴として通院し、医師が検査の結果「インフルエンザ」と診断した患者の数である。では「新型コロナウィルス」の場合はどうか。検査の結果「陽性」と判定された人はもちろん《感染者》だが、その中には無症者もいるので、必ずしも「入院治療を要する」とは限らない。つまり、まだ《患者ではない》ということになる。
 中国では、無症者を感染者としてカウントしていなかった、という話もあるくらいで、この《感染者数》という語は極めて「いい加減な」数値だということになる。
 今からでも遅くはない。マスメディアの担当者は、どのような意味で《感染者数》という語句を使用しているのか。また、政府、厚生労働省はなぜ《患者数》を公表しないのか、について説明する責任がある、と私は思う。
(2020.5.26)