梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

新型コロナウィルス感染・《検証・「陽性者数」公表の理由》

 例年、季節性インフルエンザの感染者数は1千万人、死者数は(確定)3千人余、(推定)1万人ほどと言われている。しかるに、今回の「新型コロナウィルス」の感染者数は5月22日現在、陽性者数は1万6千人余り、死者数は800人弱だ。
 季節性インフルエンザの場合は、感染拡大を恐れて「全国の学校を3か月間も休校」にしたり、「全国民に外出自粛を要請(テレワーク)」したり、「イベントの開催中止」を要請したりすることはない。普段通りの生活をしながら終息を待つ。感染が1千万人まで拡大、死者が3千人~1万人出たとしても、今回ほど詳細に、また深刻に採り上げられることはなかった。
 ではいったいなぜ、今回は「戦後最大の国難」「史上初」などと呼ばれる《大騒ぎ》になったのだろうか。というよりも、いったい誰が《大騒ぎ》に火をつけたか。第一に、為政者(政府)である。第二にマスメディアである。第三に「専門家」と称するグループである。
 政府(厚生労働省)は、当初から「一貫して」PCR検査の陽性者数を公表してきたが、なぜ陽性者数であって《患者数》ではなかったのか。マスメディアもその数値の増減に注目、それが3日間で2倍以上に増えた場合は「オーバーシュート」(感染爆発)だ、などという「専門家」の見解を紹介してきた。(国内全体を平均するとそのような事例はなかった)しかも、陽性者数は検査実施人数に大きく左右されるので、実際は公表値の「10倍か、20倍か、30倍か」は《誰にもわからない》というのが「専門家」の本音だとすれば、そんな当てにならない数値をもとに、振り回されてきた国民があわれである。
 もしこの《大騒ぎ》がこのまま終息したら、「日本は感染者数も、死者数も、他国に比べて《桁違い》に少なかった」と、為政者は胸を張るだろう。だが、騙されてはいけない。それは、政府が頼りにならないので、国民の一人一人が「自分の命は自分で守るしかない」と考えて生活をセルフ・コントロールした結果なのだ。それが証拠に、「アベノマスク」も「十万円」も、いまだに各家庭には届いていない。政府の政策は何の役にも立っていないのである。なにせ公表値が信頼できないのだから、実際値はその10倍として、感染者は16万人、死者は8千人あるかもしれない。その場合は、ほぼ外国並み(ドイツは感染者数17万余人、死者数8千余人)になるではないか。
 要するに、公表値が正しければ《大騒ぎ》する必要はなかったし、《大騒ぎ》したことが正しかったとすれば、公表値は疑わしい、ということである。 
 何よりも、厚生労働省は「なぜ患者数ではなく陽性者数を《一貫して》公表してきたか」その理由を説明する責任がある。
(2020.5.23)