梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

新型コロナウィルス感染・《日本の感染者数・死者数はなぜ少ないのか》

 5月1日現在、世界の「新型コロナウィルス」感染者数は327万2千人弱まで拡大し、死者数は23万4千人弱となった。米国は107万人弱の感染者と6万3千人の死者で世界最大の犠牲を被っている。西欧諸国も感染者は10万人以上、死者も6千人(少なくても千人)を超えているが、なぜか、日本は感染者数1万5千人強、死者は500人弱なのである。他国の十分の一だ。その理由は、おそらくPCR検査者数が他国に比べて圧倒的に少ないからだと思われる。なお、隣国の韓国は2月下旬までは日本を上回っていたが、4月下旬には逆転し、感染者数・死者数ともに日本を下回っている。
 日本と韓国の決定的な違いは、PCR検査者数だ。韓国は「世界一」を誇り、国民の100人に1人(日本の約20倍)が検査を受けている。にもかかわらず、感染者・死者が日本よりも少ないということで、世界から称賛されているそうだ。一方、日本は韓国、その他の国々とは、全く「反対」の手法で、この防疫に臨んだと思われる。つまり、検査件数を「意図的」に抑えようとした(検査に「一定の条件」を課した)のである。なぜかというと、まず感染者を特定し、その感染経路(感染集団)を明らかにする、次に、感染者の濃厚接触者を特定し、彼らの検査を優先する。さらに判明した感染者は隔離する。その方が、確実に感染者を明らかにでき、それぞれの状態(症状)に応じた適切な医療が「能率的」に行えると、専門家が判断したからであろう。「閉鎖的」な人間関係を基盤にする日本「特有の」社会では有効と考えたのかもしれない。しかし、不特定多数の「市中感染」の段階では、なす術がなく、「緊急事態宣言」で自粛・自己隔離を呼びかけるだけに終わった。
 はたして、この方法は効を奏したか。このまま終息に向かえば、日本の感染者数は多くても3万人未満、死者数は1000人未満に収まるだろう。ただし、韓国に比べて圧倒的に検査数が少ないので、数値そのもに「疑惑」がもたれて当然だろう。実数は公表値の10倍以上かもしれない。だとすれば、感染者は10万人、死者は5千人程度ということになる。西欧諸国と比べても大差ない数値だ。
 その「疑惑」を払拭するために、政府はまず「死者数が未だに500人未満」であることが「真実」であることを実証しなければならない。方法は簡単である。国内で一日の死者数は約3千人といわれている。その中で「新型コロナウィルス感染症」による肺炎での死亡者数と、それ以外の肺炎による死亡者数を並記して公表すればよいのである。前者の累計がこれまで(約2か月間で1日あたり10人弱)500人だから、後者の累計(1日あたり75人として2か月間)が4500人、合わせて5000人になるはずだ。今からでも遅くはない。ただちに疑惑を払拭する取り組みを始めるべきである。今さら、韓国と競い合ったところで、児戯に等しいと嗤われるだけだ。
(2020.5.2)