梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

新型肺炎(コロナウィルス)の《不安》・6・臨時休校

 安倍首相は「3月2日から春休みに入るまで全国の小中学校、高校や特別支援学校を臨時休校にするよう要請する考えを表明した」(「東京新聞」2月28日付け朝刊(1面)トップ記事)
 それを受け、千葉市の熊谷市長は27日、「自身のツイッターで、『医療関係者など社会を支えている職種の親はどうするのか。社会が崩壊しまねません』と強い危機感を表明した」(同)そうである。為政者同士の未熟な(不毛な)対立は笑止千万である。
 まず、安倍氏は「全国の児童生徒を感染から守るために」休校の要請を表明したわけではない。内閣の支持率がこれ以上低下することを懸念して、「みずからの地位・立場を守るために」表明したのである。なぜなら、すでに北海道、市川市が臨時休校を実施する動向を見て、政府の「無策ぶり」への批判をかわそうとしたことは見え見えだからだ。「つねに先手を」などという言辞とはうらはらに、またまた「後手を引いた」ありさまは無様というほかはない。
 つぎに、熊谷氏は、現今の学校という教育機関が、親が働く際の「保育期間」になりさがっていることを吐露している。学校はまず「子どもを預かる場」であり、学校がなければ「社会が崩壊」するというのだから、おだやかではない。本当にそうか。学校がなければ社会は存在しないか。まるで学校が社会を支えているような言辞もまた未熟である。彼もまた、市民からの支持率を得るためにそのような懸念を表明したのだろうか。
 いずれにせよ、向こう1か月程度、学校の春休みを「前倒しして」実施したところで、社会が崩壊するはずがない。授業日数の不足は夏期休業日の短縮で補えばよいことだ。
 大切なことは一点、新型コロナウィルスによる肺炎から、国民の命を守ることである。そのために今、何が必要か。いうまでもなく「国民の命を守った」事例を情報提供し、その周知徹底を図ることである。感染、発症し、軽症のまま自然治癒した患者の記録は、今何よりも貴重である。患者自身が、あるいは家族が、そして医療関係者が、その個人情報を「公表」すればよい。マスコミは、その情報を全国津図浦々まで流布すればよい。
 現状はといえば、どうすれば感染を防げるか、発症しても特効薬がない、他人事ではない(あすは我が身)等々、「不安」を煽るものばかり・・・。
 その不安がやがて恐怖にかわり、《新型コロナ肺炎「4500人(クルーズ船と流出」で(政府はひたかくす)起きること Xデーは2月20日 突然死も!劇症化の兆候
前代未聞の「空気感染」学校も会社も行っては行けない スーパーから食料が消える 受験は大パニック 妊婦と子どもにも感染 真夜中の緊急搬送》(『女性セブン』2月27日号・2月12日発売・小学館)等といった、流言飛語まがいの情報に惑わされることになる。
 軽快した患者の「個人情報」が公表されたことで、もしその患者の基本的人権が侵害されるようなら、すでに(もう本当に)日本の社会は《崩壊》しているのである。 
(2020.2.28)