梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「自衛の手段」

 東京新聞朝刊の1面トップ記事は「交番で拳銃奪い男逃走 大阪 警官刺され重体 直前 虚偽の空き巣情報」という見出しであった。要するに、犯人は事前に、近所に空き巣が入ったと110番通報し、交番にいた3人の警官のうち2人を現場に向かわせ、残った1人に襲いかかったということらしい。目的は、警官の拳銃を奪うことであり、犯人はまんまとそれを達成してしまった。
 たった1人の三十男に、屈強な3人の警官が「振り回され」、しかも1人は意識不明の重体に陥るとは・・・。いったいぜんたい、日本の警察とはその程度の危機管理能力だったのか。それとも大阪(あるいは関西の)警察だけが際立っているのか。
 いずれにせよ、①110番通報の虚偽が見抜けなかったこと、②巡査が着用していた防刃チョッキはほとんど役に立たなかったこと、③拳銃が易々と「素人」に奪われてしまったこと、は警察の大きな失態であり、一般市民に大きな不安を与えてしまった責任は免れられない。それとも、犯人は「想像以上に」頭脳明晰で、「警官以上の」格闘能力があったから、《やむを得なかった》とでもいうのだろうか。
 もう一度言う。今回の事件は、全国どこの警察においても「想定外」であり、未然に防ぐことはできない性質のものだったのか。それとも、大阪府警察だからこそ「起こるべくして起きた」事件だったのか。もし、前者でれば、私たち一般市民はただちに(拳銃所持、拳銃使用も含む)「自衛の手段」を講じなければならない、ということになる。
(2019.6.17)