ユーチューブで映画「故郷(ふるさと)」(監督・伊丹万作・1937年)を観た。 信州の山村にある酒屋の家族の物語である。タイトルバックには、ニワトリ、牛、犬の鳴き声、小鳥の囀り、子どもたちの唱歌「水師営の会見」が聞こえる。やがて映し出されたのは「喜多の園」という看板の酒屋で、味噌、缶詰なども扱っ... 続きをみる
2024年10月のブログ記事
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ユーチューブで映画「吾輩ハ猫デアル」(監督・山本嘉次郎・1936年)を観た。原作は夏目漱石の小説、その主役は「吾輩」と名乗る猫だが、映画に登場する猫は、何とも貧相で、旧制中学の教員・珍野苦沙弥先生(丸山定夫)宅に迷い込み、女中の清(芸名不詳・好演)につまみ出されそうになったとき、先生が「置いてや... 続きをみる
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原作は真山青果、明治から大正にかけ、浪曲界の大看板で「浪聖」と謳われた桃中軒雲右衛門の「身辺情話」である。成瀬作品にしては珍しく「男性中心」の映画で、女優は雲右衛門の曲師であり妻女のお妻を演じた細川ちか子、愛妾・千鳥を演じた千葉早智子しか存在感がない。(他は、ほとんど芸者衆である。) 筋書きは... 続きをみる
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ユーチューブで映画「兄いもうと」(監督・木村荘十二・1936年)を観た。多摩川の川師・赤座一家の物語である。川師とは、洪水を防ぐために川の流れを堰き止めたり、川底に石を敷いて流水の勢いを弱めたり、用水路を整えたり、といった河川管理を生業とする。父の赤座(小杉義男)は数十人の人足を束ねる現場監督だ... 続きをみる
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ユーチューブで映画「女優と詩人」(監督・成瀬巳喜男・1935年)を観た。戦前(昭和初期)日本の夫婦コメディの佳作である。主なる登場人物は演劇界のスター女優・二ツ木千絵子(千葉早智子)とその夫で童謡詩人の二ツ木月風(宇留木浩)を中心に、隣家の保険勧誘員・花島金太郎(三遊亭金馬)、その妻・お浜(戸田... 続きをみる
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ユーチューブで映画「君と行く路」(監督・成瀬巳喜男・1936年)を観た。タイトルに「三宅由岐子作『春愁紀』より」とある。舞台は神奈川・鎌倉海岸の別荘地、ある別荘に母・加代(清川玉枝)とその息子、長男の天沼朝次(大川平八郎)、次男の天沼夕次(佐伯秀雄)が住んでいた。母は芸者上がりのシングル・マザー... 続きをみる
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ユーチューブで映画「祇園の姉妹」(監督・溝口健二・1936年)を観た。祇園の芸妓として生きる姉妹の物語である。姉は梅吉(梅村蓉子)、妹はオモチャ(山田五十鈴)と呼ばれている。その借家に、木綿問屋主人・古沢(志賀廼家辯慶)が転がり込んできた。店が倒産、骨董・家具などが競売されている最中、夫人(久野... 続きをみる
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ユーチューブで映画「浪華悲歌」(監督・溝口健二・1936年)を観た。19歳の女優・山田五十鈴主演の傑作である。冒頭は、薬種問屋の主人・麻居(志賀廼家弁慶)が、けたたましい嗽いの音を立てて洗面・歯みがきをしている。タオルで顔を拭きながら縁側に出る。女中に「このタオル、しめってるがな」。朝の太陽を仰... 続きをみる
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タイトルの「有りがたうさん」とは、ある男のニックネームである。彼は三島~下田間を往復する乗合バスの運転手、まだ二十代の二枚目(上原謙)、天城・下田街道を歩く人々を(時にはニワトリの群れにまでも)追い抜くたびに、「(道を譲ってくれて)ありがとう!」と声をかけて往く。走行距離は二十里、二つの峠を越さ... 続きをみる
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原作は谷崎潤一郎、文学の世界では作者特有のマゾヒズム、耽美主義が取り沙汰されているようだが、映画の世界では、お琴(田中絹代)と佐助(高田浩吉)の「師弟愛」が清純に描出されていた、と私は思う。 お琴は大阪・薬屋の次女、9歳の時に罹患し盲目となった。かねてより琴・三味線を習っていたので、その道を極... 続きをみる
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ユーチューブで映画「噂の娘」(監督・成瀬巳喜男・1935年)を観た。東京にある老舗「灘屋酒店」の家族の物語である。主人・健吉(御橋公)は婿養子に入ったが、妻はすでに他界、義父・啓作(汐見洋)、姉娘・邦江(千葉早智子)、妹娘・紀美子(梅園龍子)、他に使用人数名と暮らしている。向かいの床屋(三島雅夫... 続きをみる
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ユーチューブで映画「浅草の灯」(監督・島津保次郎・1935年)を観た。東京・浅草を舞台に繰り広げられるオペラ一座の座長、座員、観客、地元の人々の物語である。 冒頭は、オペレッタ「ボッカチオ」の舞台、座員一同が「ベアトリ姉ちゃん」を合唱し ている。その中には、山上七郎(上原謙)が居る。藤井寛平(... 続きをみる
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ユーチューブで映画「東京の宿」(監督・小津安二郎・1935年)を観た。原作はウィンザァト・モネとあるが、英語のウィズアウト・マネーをもじった名前で、「金無しに」「金が無ければ」「金の他に」ほどの意味であろう。要するに、架空の人物であり、脚色の池田忠雄、荒田正夫、監督・小津安二郎の合作ということで... 続きをみる
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冒頭のタイトルに続き、「配役」になると、女性の歌声が流れ出す。耳を澄ませると、「並ぶ小窓に はすかいに 交わす声々日が落ちる 旅暮れて行く空の鳥 母の情けをしみじみと」と聞こえるが、定かではない。主なる登場人物は、根本嘉一・岩田祐吉、春子・吉川満子、寛一・藤井貢、加代子・桑野通子、秀雄・三井秀夫... 続きをみる
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戦前の「大衆演劇」を描いた邦画に「浮草物語」(監督小津安二郎・1934年)がある。ユーチューブで観賞できるが、サイレント版であり、全く沈黙の世界である。しかし、場面の随所にはセリフの字幕が挿入されており、不自由はしない。 登場するのは市川喜八(坂本武)一座、信州(?)の田舎町に九年ぶりにやって... 続きをみる
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ユーチューブで映画「隣の八重ちゃん」(監督・島津保次郎・1934年)を観た。(戦前の)ホーム・ドラマのはしりとでも言うべき佳品である。登場するのは、東京郊外(多摩川べり、あるいは江戸川べり)に隣同士で暮らしている二つの中流家庭、服部家と新井家の家族である。タイトルにある八重ちゃん(逢初夢子)は、... 続きをみる
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ユーチューブで映画「限りなき舗道」(監督・成瀬巳喜男・1934年)を観た。成瀬監督最後のサイレント映画である。舞台は東京銀座、カフェの女給二人が登場する。一人は島杉子(忍節子)、もう一人は中根袈裟子(香取千代子)。杉子はしとやかで控えめ、袈裟子は活発でドライと性格は正反対だが、仲良くアパートに同... 続きをみる
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ユーチューブで映画「母を恋はずや」(監督・小津安二郎・1934年)を観た。「(この映画の)フィルムは現存するが、最初と最後の巻が失われている不完全バージョンである」(ウィキペディア百科事典)。 裕福な家庭・梶原家が、父の急逝により没落していく、そこで展開する家族の人間模様がきめ細やかに描き出さ... 続きをみる
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ユーチューブで映画「婦系図」(監督・野村芳亭・1934年)を観た。原作は泉鏡花の新聞小説で1907年(明治40年)に発表され、翌年には新派の舞台で演じられている。有名な「湯島境内の場」は原作にはなく、いわば演劇のために脚色されたものである。それから27年後、野村芳亭(野村芳太郎の父)によって、初... 続きをみる
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二組の男女(同胞)が登場する。その一は姉・ちか子(岡田嘉子)と弟・良一(江川宇礼雄)、その二は兄(奈良真養)と妹・春江(田中絹代)である。姉はタイピスト、夜は大学教授の下で翻訳補助を行い、大学に通う弟の学資を稼いでいる。兄は警察官、妹は良一の恋人である。二組の男女はそれぞれ慎ましく暮らし、やがて... 続きをみる
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ウィキペディア百科事典では、この作品について以下のように解説している。「・・・『大学の若旦那』(1933年)に始まる「大学の若旦那シリーズ」で明るく朗らかな笑いを提供し、清水は、このシリーズの成功によって松竹現代劇の娯楽映画を代表する監督となった。主演には、清水と体型が似た慶応ラグビー出身の藤井... 続きをみる
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ユーチューブで映画「夜ごとの夢」(監督・成瀬巳喜男・1933年)を観た。この映画の面白さ(見どころ)は、何と言っても「配役の妙」にある。小津安二郎作品でお馴染みの坂本武、飯田蝶子コンビが阿漕な仇役、齋藤達雄が救いようのない無様な男を演じ、吉川満子、新井淳が思い切りお人好し、善人夫婦の景色を醸し出... 続きをみる
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「袴田事件」の再審判決に対し、検事総長は控訴しないと表明した。しかし、その談話では「判決は多くの問題を含む到底承服できないもので、控訴して上級審の判決を仰ぐべき内容だと思われる。しかし、袴田さんが結果として相当な長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきたことに思いを致し、熟慮を重ねた結果、... 続きをみる
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ユーチューブで映画「島の娘」(監督・野村芳亭・1933年)を観た。昭和中期以前の世代にとっては、あまりにも有名な流行歌「島の娘」(詞・長田幹彦、曲・佐々木俊一、歌・小唄勝太郎)を主題歌とするサイレント映画(オールサウンド版)である。タイトルと同時に、「島の娘」のメロディー(BGM)が流れ、原案・... 続きをみる
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映画「恋の花咲く 伊豆の踊子」(監督・五所平之助・1933年)
ユーチューブで「恋の花咲く 伊豆の踊子」(監督・五所平之助・1933年)を観た。タイトルに「恋の花咲く」という文言が添えられているように、この作品は川端康成の原作を大きく改竄している。それはそれでよい、むしろその方が映画としては面白かった、と私は思う。主人公の学生・水原(大日向伝)は原作の「私」... 続きをみる
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ネット記事に《キングオブコント2024」審査員決定 シソンヌじろう新加入で“史上初”全員歴代王者による審査へ》という見出しのニュースがあった。 《【モデルプレス=2024/10/06】10月12日、よる6時30分より放送される“日本一のコント師”を決める大会「カーネクスト presents『キン... 続きをみる
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ユーチューブで映画「サーカス五人組」(監督・成瀬巳喜男・1935年)を観た。この映画、タイトル、スタッフ、キャスト紹介までの画面は鮮明であったが、物語が始まった途端に、どこがどこやら、誰が誰やら、茫として判らない。要するに、フィルムが劣化して霞がかかっているのだ。それもまた一興、古文書を解き明か... 続きをみる
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映画「大人の見る絵本 生れてはみたけれど」(監督・小津安二郎・1932年)
ユーチューブで映画「大人の見る絵本 生れてはみたけれど」(監督・小津安二郎・1932年)を観た。「大人の見る絵本」というタイトルだが、登場人物は子どもたちが中心である。またその中の中心になるのが吉川家の兄・良一(菅原秀雄)とその弟(突貫小僧)ということである。 吉川家はこれまで麻布に居たが、子... 続きをみる
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ユーチューブで映画「港の日本娘」(監督・清水宏・1933年)を観た。戦前の男女の色模様を描いた傑作である。港の日本娘とは黒川砂子(及川道子)のことである。彼女には無二の親友、ドラ・ケンネル(井上雪子)がいた。この二人に絡むのが男三人、プレイボーイのヘンリー(江川宇礼雄)、貧乏な街頭画家・三浦(齋... 続きをみる
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ユーチューブで映画「出来ごころ」(監督・小津安二郎・1933年)を観た。昭和初期、人情喜劇の傑作である。主なる登場人物は男4人、女2人。男は、東京のビール工場で働く日雇い労働者・喜八(坂本武)、その息子・冨夫(突貫小僧)、喜八の同僚・次郎(大日向伝)、近所の床屋(谷麗光)、女は、千住の製糸工場を... 続きをみる
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ユーチューブで映画「滝の白糸」(監督・溝口健二・1933年)を観た。原作は泉鏡花の小説、昭和世代以前には広く知れわたっている作品である。 時は明治23年(1890年)の初夏、高岡から石動に向かう乗合馬車が人力車に追い抜かれていく。乗客たちは「馬が人に追い抜かれるなんて情けない、もっと速く走れ」... 続きをみる
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ユーチューブで映画「路上の霊魂」(監督・村田実・1921年)を観た。ヴィルヘルム・シュミットボンの『街の子』(森鴎外訳)とマクシム・ゴーリキーの『夜の宿(どん底)』(小山内薫訳)が原作で、ナ、ナ、ナント、日本の演劇界の革新に半生を捧げた小山内薫自身が出演しているとは・・・。ウィキペディア百科事典... 続きをみる
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1966年に起きた清水市一家4人強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌氏の再審公判で、静岡地裁は無罪の判決を言い渡した。その判決文で、有罪の証拠とされた「5点の衣類」について、以下のように断じている。 〈事件発生から1年2か月後にみそタンクから見つかり、犯行時の着衣とされた「5点の衣類」は、赤みを感じ... 続きをみる