梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

2015年のブログ記事

2015年(ムラゴンブログ全体)
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・17

    《第4章 自閉症の言語世界》 《要約》 【オウム返しの謎】 ・自閉症児の言語は、彼らの行動と同じように捉えどころがない。けれども、「言語行動」という言葉があるように、言語を使うのも行動の一種なのであり、外部環境に働きかけたり取り込んだりするための手段なのである。自閉症児の言葉の問題には、行動の問題... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・16

    【身体に現れた症状】 《要約》 ・自閉症者は行動のプログラムの立て方に問題があり、その結果、(略)長時間固定した姿勢を保ったり、歩行を続けたりすることができなくなる。その状態が10年、20年と積み重ねられているうちには、身体を動かしたり支えてりする骨や筋肉にも異常が生じてくるはずである。 ・自閉症... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・15

    【遊べない子ども】 《要約》 ・子どもは、早くから所有欲をもち、長い期間、他者とのぶつかり合いを経験して、充分自我を育てた後、三歳を過ぎた頃から他児との歩調を合わせて共同遊びができるようになる。それは、共感の世界が芽生える時期で、「こころの理論」が新しい局面でつくられるときである。 ・しかし、共同... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・14

    【こころの理論】 《要約》 ・人のこころの内側を想像しながら行動することは、自閉症者にとって非常にむずかしいことなのである。 ・私たちは、たえず他人のこころの内側まで判断しながら行動している。つまり、こころの法則のようなものに気づいていて、自分なりの「こころの理論」を構成している。ところが自閉症児... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・13

    【カード分類テスト】 《要約》 ・自閉症児は、状況と関連させながら行動を進めることができない。一度プログラムを手にしてしまうと、それを変更しようとしない。また、微妙な感情のレベルで障害が見られる。 ・自閉症児の振る舞いを見ていると、前頭前野における発達障害を疑わせるところが非常に多いのだが、この仮... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・12

    【大脳の三つのブロック】 《要約》 ・第1ブロックは脳幹、視床下部、大脳辺縁系を含む領域で、欲望や感情に関係するだけでなく、大脳皮質の興奮水準を調節している。第2ブロックは、大脳皮質、すなわち頭頂葉(筋肉感覚と触覚刺激の入力)、側頭葉(聴覚刺激の入力)、後頭葉(視覚刺激)からなる領域であり、情報の... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・11

    【状況・行動規制】 《要約》 ・どのようなときには何をしなければならないか。人間も含めてすべての動物の脳にはおのことについての無数のルールが組み込まれている。雨が降れば傘をさすし、部屋に入るにはドアを開ける。つまり、状況が行動を生み出す。 ・すばやく状況を認知し、行動するためのルールは、状況・行動... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・10

    《第3章 自閉症の行動世界》 《要約》 【行き先についての謎】 ・自閉症者の動きは特有である。一挙手一投足がどこか私たちとは違う。違うことはわかるが、どのように違うかは実はよくわかっていない。彼らは、私たちの目の前を横切り、どこにいこうとしているのだろう。その行き先をこの章では追求してみることにす... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・9

    【認知の革命】 《要約》 ◆前操作期・・・2歳→6歳 ◆具体的操作期・・・6歳→12歳 ◆形式的操作期・・・12歳→  このモデルは、人間が人生の初期であればあるほど、急勾配の坂を駆け上がりながら認知構造の変革をおこなうことを示してくれている。このとき必要とされているエネルギーは、計り知れないもの... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・8

    【「私」の芽生え】 《要約》 ・外部の世界に手ごたえを感じ始めた幼児が用いるのは、言葉だけではない。言葉の獲得期に言葉よりもはるかに高頻度に用いられるのが、指さしである。 ・この指さしの現れも、自閉症児の場合、非常に遅いのである。「指さし行動が生後数ヶ月までにできることはめずらしい」(メアリ・コー... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・7

    【生後二年目の飛躍】 《要約》 ・人の発達は、生後一年間の不自由があるからこそ、その後の発達が飛躍的なものとなる。・直立し、高い視野と達者な足腰をもつようになった人の子どもは、ハイスピードで世界を拡大し始め、そのまま、彼の養育者である母の視野の外まで飛び出してしまいそうに見える。しかし、そうしない... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・6

    【生後1年間の謎】 《要約》 ・人間は、脳の設計思想から。また「生後1年間に及ぶ無力な状態」から、自閉症になる「可能性」をもっている。 ・ヒトの胎児は、大きな脳をもった自分自身を胎内に収めるために、他のすべての器官の発達を最小限に抑えなければならなかった。体のバランスとそれに伴う活動の水準が他の哺... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・5

    【脳の設計思想】 《要約》 ・ヒトの脳の各部位は、一般に、①脳幹、②視床下部、③大脳辺縁系、④大脳皮質、⑤前頭葉という名称で表されているが、米国の生理学者ポール・マクリーンは、進化という観点から、①爬虫類脳、②古哺乳類脳、③新哺乳類脳という三層構造の模式図を提案した。爬虫類脳は、脳幹・視床下部に、... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・4

    《第2章》自閉症の幼児期 【要約】 《謎をさかのぼる》 ・自閉症というきわめてユニークな症状をもたらす原因の大本となっているものは必ずしもユニークなものではなく、知能障害などとも共通する非常に多くの病因が考えられるのだった。それらの病因が、何故しばしば自閉症へ発展するのか、その理由として考えられる... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・3

    【自閉症の診断】 ・自閉症は単一の原因によって生まれるものではなく、複数の原因に由来した障害をもつ症候群である。しかも、その症状は一人一人微妙に違うため、自閉症者の数だけ自閉症の物語があると言ってもいいほどである。 ・自閉症の第一発見者であるカナーが自閉症児の中に認めた症状は、要約すると、次の五項... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・2

    《第1章 自閉症の発見》 【要約】 ◎発端となる謎 ・自閉症の発見は、1943年と翌1944年に、米国の小児精神科医カナーとオーストリアの小児精神科医アスペルガーによって相次いでなされた。しかも「自閉症」(オーティズム)という全く同じ病名を用いることによって。大きな謎として迎えられたこの障害は、か... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・1

    《はじめに》 【要約】 ・自閉症とは、現在では、出生前もしくは出生後のごく初期に発生する発達障害の独特なタイプであると考えられている。それは、未完成な、また、それだけに爆発的な発達を遂げる幼い脳に起きた小さな出来事の結果によるものである。最初は小さな異変であったものが、大きな建築物の大事な骨組みに... 続きをみる

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  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・序

    《序》 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)を再読する。この本は今から22年前に刊行され、私はほぼ20年前に一読した。「自閉症」の《謎》とされている部分に対して、第三者(学者)として、大変わかりやすく解説されており、多くの示唆を与えられた。あらためて再読しようと思い立った... 続きをみる

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  • 「禁断の実は満月に輝く」(NHK・Eチャンネル)というドラマの《核心》

     「禁断の実は満月に輝く」(NHK・Eチャンネル)というテレビドラマを観た。そのあらすじは以下の通りである。(ネットサイト「まんたんウェブ」より引用)  ◆「ダウン症のイケメン」を自負する主人公・光司(略)はある日、自分の障害が原因で大好きな兄の結婚が中止になったと知り、ショックを受ける。そこで障... 続きをみる

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  • コウちゃんの「知的障害は重い」か?

     東京新聞5月27日付け朝刊(19面)に「コウちゃんのクラス」という記事が載っている。「コウちゃんのクラスは、肢体不自由の特別支援学級の七組。在籍児童はコウちゃん一人で。2010年の入学に合わせて新設された。以来深谷教諭が中心となり、コウちゃんの力を伸ばす指導に取り組んできた」とあり、6年間の交流... 続きをみる

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  • あるカップルの若者へ

     駅の改札口を出ると、テーマパークに向かう道は若いカップルでごった返していた。手をつなぎ、笑顔を交わしながら歩を進めている。しかし、その流れに遅れて最後尾を歩くカップルがいた。小柄な女性が跛行している。男性は寄り添いながらゆっくり、ゆっくり歩いている。近道の歩道橋は避け、遠方の横断歩道へ向かった。... 続きをみる

  • 八月十五日

     夏休みなので、長野に住む小学4年生の孫がやってきた。彼は、保育園の時から空手を習い始め6年目になるが、これまで試合で勝ったことが一度もなかった。しかし、「継続は力なり」、最近の試合では3戦全勝で優勝したという。これまで負け続けていたのに「なぜ勝てたのか」、私は不思議でならなかった。そのことを孫に... 続きをみる

  • 「うたくらべ ちあきなおみ」の《魅力》

    インターネットのウィキペディアフリー百科事典・「ちあきなおみ」の記事に、以下の記述がある。〈1992年9月21日に夫の郷鍈治と死別した。郷が荼毘に付される時、柩にしがみつき「私も一緒に焼いて」と号泣したという。また、「故人の強い希望により、皆様にはお知らせせずに身内だけで鎮かに送らせて頂きました。... 続きをみる

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  • 落とし物

     北海道・富良野、美瑛のフラワーガーデンを満喫して帰路に就く日、北海道大学札幌キャンパスに立ち寄った。古河講堂、クラーク像、ポプラ並木、大野池を経て、札幌農学校第二農場へと向かう。「都ぞ弥生の雲紫に 花の香漂ふ宴遊(うたげ)の筵(むしろ)・・・夢こそ一時青き繁みに 燃えなん我胸想ひを載せて・・・人... 続きをみる

  • 野坂昭如氏、最後の《一文》

    「焼け跡闇市派」を自称する作家・野坂昭如氏が逝った。(雑誌連載)最後の原稿の末尾の一文は「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」だったという。(東京新聞12月11日朝刊・1面)私たちは、この「戦前」という言葉の意味を噛みしめなければならない。それは、国民が同じ価値観、同じ考え方で、... 続きをみる

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  • 道徳「教科化」の《問題点》・学校教育の《誤り》

     東京新聞朝刊(1面)に、「難しい心の評価 道徳教科化 指導要領改定案」という見出しのトップ記事が載っている。その内容を要約すると、以下の通りである。 ①文部科学省は4日、現在は小中学校の教科外活動の道徳を、正式な教科とする学習指導要領の改定案を公表した。 ②文科省は「教材を読むだけの読み物道徳か... 続きをみる

  • 道徳「教科化」(学習指導要領改訂案)の《誤り》

     文部科学省は、「道徳」の学習内容に、「節度、節制」「親切、思いやり」「国や郷土を愛する態度」「生命の尊さ」といった徳目(キーワード)を加え、《教科化》するという「学習指導要領改定案」を公表した。しかし、それは、「教科別の指導」と「領域の指導」を混同しているという点で、《完全な誤り》である。「教科... 続きをみる

  • 《私の教育「改革」基本法》

     「教育基本法」は平成18年(2007年)12月に改まったが、実際の「教育」そのものは、いっこうに改まる様子が見られない。そこで、私版「教育改革基本法」を以下の通り提言する。 《私の教育「改革」基本法》 第1条 すべて大人は子どもを「よい子」に育てなければならない。「よい子」とは「相手を大切にし、... 続きをみる

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  • 「イスラム国」と「わが国」の《共通点》

     武装集団「イスラム国」の思想・信条・戦略・戦術には、「わが国」との《共通点》が仄見える。「わが国」日本も、つい70年前までは、《八紘一宇》という標語のもとに、「撃ちてし止まん」「欲しがりません勝つまでは」といった(押しつけられた)信条が、巷間を闊歩していた。戦略は「大東亜共栄」と「鬼畜米英」、「... 続きをみる

  • 《老い》の日々

     昇る朝日を仰ぎ見ながら「今日も一日、無事であれかし」と祈り、その日の終わりには、沈む夕日に感謝する、という毎日を送らなければならない。年寄りの「幸せ」とは、そのようなものであろう。もはや、「やるべき」ことは何もない。ただ、おのれの呼吸が止まらないことを祈るだけなのである。過ぎ去った昔の思い出は「... 続きをみる

  • 「授業で道路清掃」の《意味》

     東京新聞12月19日付け朝刊・「発言」欄に、「授業で道路掃除とは?」という記事が載っている。筆者は、校外で清掃活動を行っている生徒たちの様子を見て、「文部科学省のカリキュラムですか」と若い教員に尋ねたところ、「いいえ、区の・・・」という答が返ってきたそうだ。筆者はその活動を「思いがけない光景」と... 続きをみる