梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「旧約聖書」通読・《創世記》・第16章

■第16章
・アブラムの妻サライは子を産まなかった。彼女にひとりのつかえめがあった。エジプトの女で名をハガルといった。サライはアブラムに言った。「主はわたしに子をお授けになりません。どうぞ、わたしのつかえめの所におはいりください。彼女によってわたしは子をもつことになるでしょう」。アブラムはサライの言葉を聞き入れた。サライはハガルをアブラムに妻として与えた。これはアブラムがカナンの地に10年住んだ後であった。彼はハガルの所にはいり、ハガルは子をはらんだ。彼女は自分のはらんだのを見て、女主人を見下げるようになった。そこでサライはアブラムに言った。「わたしが受けた害はあなたの責任です。彼女は自分のはらんだのを見て、わたしを見下げます。どうか、主があなたとわたしの間をおさばきになるように」。アブラムはサライに言った。「あなたのつかえめはなたの手のうちにある。あなたの好きなように彼女にしなさい」。そしてサライが彼女を苦しめたので、彼女はサライの顔を避けて逃げた。
・主の使いは荒野にある泉のほとり、シュルの道にある泉のほとりで彼女に会い、そして言った。「ハガルよ、あなたはどこからきたのですか。また、どこへ行くのですか」。彼女は言った。「わたしはサライの顔を避けて逃げているのです」。主の使いは彼女に言った。「あなたは女主人のもとに帰って、その手に身を任せなさい。わたしは大いにあなたの子孫を増して、数え切れないほどに多くしましょう。あなたは身ごもっています。男の子を産むでしょう。名をイシマエルと名づけなさい。主があなたの苦しみを聞かれたのです。彼は野ろばのような人となり、その手はすべての人に逆らい、すべての人の手は彼に逆らい、彼はすべての兄弟に敵して住むでしょう」。そこでハガルは自分に語られた主の名を呼んで「あなたはエル・ロイです」と言った。彼女が「ここでも、わたしを見ていられるかたのうしろを拝めたのか」と言ったことによる。それでその井戸は「ペエル・ラハイ・ロイ」と呼ばれた。これはカデシとペレデの間にある。
・ハガルは男の子を産んだ。アブラムはイシマエルと名づけた。アブラムは86歳であった。
(2021.9.16)

「旧約聖書」通読・《創世記》・第15章

■第15章
・その後、主の言葉が幻のうちにアブラムに臨んだ。「アブラムよ恐れてはならない。わたしはあなたの盾である。あなたの受ける報いは、はなはだ大きいであろう」。アブラムは言った。「主なる神よ、わたしには子がなく、家を継ぐ者はダマスコのエリエゼルであるのに、何をくださろうとするのですか」。アブラムはまた言った。「あなたはわたしに子を賜らないので、わたしの家に生まれたしもべが、あとつぎとなるでしょう」。この時、主の言葉が彼に臨んだ。「この者はあなたのあとつぎとなるべきではありません。あなたの身から出る者があとつぎとなるべきです」。そして彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで星を数えてみなさい。あなたの子孫はあのようになるでしょう」。アブラムは主を信じた。主はこれを彼の義と認められた。
・また主は彼に言われた。「わたしはこの地をあなたに与えて、これを継がせようと、あなたをカルデヤのウルから導き出した主です」。彼は言った。「主なる神よ。わたしがこれを継ぐのをどうして知ることができますか」。主は彼に言われた。「3歳の雌牛と、3歳の雌やぎと、3歳の雄羊と、山ばとと、家ばとののひなとを、わたしの所に連れてきなさい」。彼はこれらをみな連れてきて、二つに裂き、裂いたものを互いに向かい合わせて置いた。ただし鳥は裂かなかった。荒い鳥が死体の上に降りるとき、アブラムはこれを追い払った。
・日の入るころ、アブラムが深い眠りにおそわれた時、大きな恐ろしい暗闇が彼に臨んだ。時に主はアブラムに言われた。「よく心にとめておきなさい。あなたの子孫は他の国に旅びととなって、その人々に仕え、その人々は彼らを400年の間悩ますでしょう。しかし、わたしは彼らが仕えたその国民をさばきます。その後かれらは多くの財産を携えて出てくるでしょう。あなたは安らかに先祖のもとに行きます。そして高齢に達して葬られるでしょう。4代目になって彼らはここに帰ってくるでしょう。アモリびとの悪まだ満ちないからです」。
・やがて日は入り、暗闇になった時、煙の立つかまど、炎の出るたいまつが、裂いたものの間を通り過ぎた。その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。「わたしはこの地をあなたの子孫に与える。エジプトの川から、かの大川ユフラレまで。ケニびと、ケニジびと、カドモニびと、ヘテびと、ペリジびと、レバイムびと、アモリびと、カナンびと、ギリガシびと、エプスびとの地を与える」。
(2021.9.15)

「旧約聖書」通読・《創世記》・第14章

■第14章
・シナルの王アムラベル、エラサルの王アリオク、エラムの王ケダラオメル、ゴイムの王テダルは、ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アデマの王シナブ、ゼポイムの王セメペルおよびゾアルの王と戦った。これら五人の王はみな同盟してシデムの谷、塩の海に向かって行った。彼らは12年の間ケダラオメルに仕えたが13年目に背いたので、14年目にケダラオメルは彼と連合した王とともにきて、アシタロテ・カルナイムでレバイムびとを、ハムでズジびとを、シャベ・キリアタイムでエミびとを撃ち、セイルの山地でホリ人を撃って、荒野のほとりにあるエル・パランに及んだ。彼らは引き返して、カデンへ行って、アマレクびとの国をことごとく撃ち、またハザゾン・タマルに住むアモリびとをも撃った。そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アデマの王、ゼポイムの王、ゾアルの王は、シデムの谷で彼らに向かい戦いの陣をしいた。シデムの谷にはアスファルトの穴が多かったので、ソドムの王とゴモラの王は逃げてそこに落ちたが、残りの者は山にのがれた。そこで彼らはソドムとゴモラの財産と食料をことごとく奪って去り、またソドムに住んでいたアブラムの弟の子ロトとその財産を奪って去った。
・ひとりの人がのがれてきてヘブルびとアブラムに告げた。この時、アブラムはエシコルの兄弟、アネルの兄弟であるアモリびとマムレのテレピンの木のかたわらに住んでいた。彼らはアブラムと同盟していた。アブラムは身内の者が捕虜になったのを聞き、家の子318人を引き連れてダンまで追っていき、夜かれらを攻め、これを撃ってダマスコの北、ホバまで彼らを追った。そして彼はすべての財産を取り返し、ロトとその財産および女たちと民とを取り返した。
・アブラムがケダラオメルとその連合の王たちを撃ち破って帰った時、ソドムの王はシャベの谷に出て彼を迎えた。その時、サレムの王メルキゼデクはパンとぶどう酒を持ってきた。彼は神の祭司である。彼はアブラムを祝福して言った。「天地の主なるいと高き神がアブラムを祝福されるように あなたの敵をあなたの手に渡された。いと高き神があがめられるように」。
・アブラムは彼にすべての物の十分の一を贈った。ソドムの王はアブラムに言った。「わたしには人をください。財産はあなたが取りなさい」。アブラムはソドムの王に言った。「天地の主なるいと高き神、主に手をあげて、わたしは誓います。糸一本でも、くつひも一本でも、あなたのものは何も受けません。アブラムを富ませたのはわたしだと、あなたが言わないように。ただし若者たちがすでに食べたものは別です。そしてわたしと共に行った人々アネルとエシコルとマムレとにはその分を取らせなさい」。
(2021.9.14)