梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「旧約聖書」通読・《創世記》・第37章

■第37章
・ヤコブは父の寄留の地、カナンの地に住んだ。ヤコブの子孫は次のとおりである。
・ヨセフは17歳の時、兄弟たちと共に羊の群れを飼っていた。彼はまだ子供で、父の妻たちビルハとジルバとの子らと共にいたが、ヨセフは彼らの悪いうわさを父に告げた。ヨセフは年寄りの子であったから、イスラエルは他のどの子よりも彼を愛して、彼のために長そでの着物をつくった。兄弟たちは父がどの兄弟よりも彼を愛するのを見て、彼を憎み、穏やかに彼に語ることができなかった。
・ある時、ヨセフは夢を見て、それを兄弟たちに話したので、彼らは、ますます彼を憎んだ。ヨセフは彼らに言った。「わたしが見た夢を聞いてください。わたしたちが畑の中で束を結わえていたとき、わたしの束が起きて立つと、あなたがたの束がまわりにきて、わたしの束を拝みました」。すると兄弟たちは彼に向かって「あなたはほんとうにわたしたちの王になるのか。あなたは実際わたしたちを治めるのか」と言って、彼の夢とその言葉ゆえにますます彼を憎んだ。ヨセフはまた一つの夢を見て、それを兄弟たちに語って言った。「わたしはまた夢を見ました。日と月と11の星とがわたしを拝みました」。彼はこれを父と兄弟たちに語ったので、父は彼をとがめて言った。「あなたが見たその夢はどういうのか。ほんとうにわたしとあなたの母と、兄弟たちとが行って地に伏し、あなたを拝むのか」。兄弟たちは彼をねたんだ。しかし父はこの言葉を心にとめた。
・さて兄弟たちがシケムに行って、父の羊の群れを飼っていたとき、イスラエルはヨセフに言った。「あなたの兄弟たちはシケムで羊を飼っているではないか。さあ、あなたを彼らの所へつかわそう」。ヨセフは父に言った。「はい、行きます」。父は彼に言った。「行って、あなたの兄弟たちは無事であるか、群れは無事であるか見てきて、わたしに知らせてください」。父が彼をヘブロンの谷からつかわしたので、彼はシケムに行った。ひとりの人が彼に会い、彼が野をさまよっていたので、その人は彼に尋ねて言った。「あなたは何を捜してしるのですか」。彼は言った。「兄弟たちを捜しているのです。彼らが、どこで羊を飼っているのか、どうぞわたしに知らせてください」。その人は言った。「かれらはここを去りました。彼らが『ドタンへ行こう』と言うのをわたしは聞きました」。そこでヨセフは兄弟たちのあとを追って行って、ドタンで彼らに会った。ヨセフが彼らに近づかないうちに、彼らははるかにヨセフを見て、これを殺そうと計り、互いに言った。「あの夢見る者がやって来る。彼を殺して穴に投げ入れ、悪い獣が彼を食ったと言おう。そして彼の夢がどうなるか見よう」。ルペンはこれを聞いて、ヨセフを彼らの手から救いだそうとして言った。「われわれは彼の命を取ってはならない。血を流してはいけない。彼を荒野のこの穴に投げ入れよう。彼に手をくだしてはならない」。これはヨセフを彼らの手から救いだして父に返すためであった。さて、ヨセフが兄弟たちのもとへ行くと、彼らはヨセフの着物、長そでの着物をはぎとり、彼を捕らえて穴に投げ入れた。その穴はからで、その中に水はなかった。
・こうして彼らはすわってパンを食べた。彼らが目をあげて見ると、イシマエルびとの隊商が、らくだに香料と、乳香と、もつやくとを負わせてエジプトへ下り行こうとギレアデからやってきた。そこでユダは兄弟たちに言った。「われわれが弟を殺し、その血を隠して何の益があろう。さあ、われわれは彼をイシマエルびとに売ろう。彼はわれわれの兄弟、われわれの肉親だから、彼に手を下してはならない」。兄弟たちはこれを聞き入れた。時に、ミデアンびとの商人たちが通りかかったので、彼らはヨセフを穴から引き上げ、銀20シケルでヨセフをイシマエルびとに売った。彼らはヨセフをエジプトに連れて行った。
・さてルペンは穴に帰って見たが、ヨセフが穴の中にいなかったので、彼は衣服を裂き、兄弟たちのもとに帰って言った。「あの子はいない。ああ、わたしはどこへ行くことができよう」。彼らはヨセフの着物を取り、雄やぎを殺して、着物をその血に浸し、その長そでの着物を父に持って帰って言った。「わたしたちはこれを見つけましたが、これはあなたの子の着物か、見定めてください」。父はこれを見定めて言った。「わが子の着物だ。悪い獣が彼を食ったのだ。確かにヨセフはかみ裂かれたのだ」。そこでヤコブは衣服を裂き、荒布を腰にまとって、長い間その子のために嘆いた。子らと娘らとは皆立って彼を慰めようとしたが、彼は拒んで言った。「いや、わたしは嘆きながら陰府に下って、わが子のもとに行こう」。こうして父は彼のために泣いた。さて、かのミデアンびとらはエジプトでパロの役人、侍衛長ポテパルにヨセフを売った。
(2021.10.8)

「旧約聖書」通読・《創世記》・第36章

■第36章
・エサウの系図は次のとおりである。エサウはカナンの娘たちのうちから妻をめとった。ヘテびとエロンの娘アダと、ヒビびとヂベオンの子アナの娘アホリバマとである。また、イシマエルの娘ネパヨテの妹バスマテをめとった。アダはエリパズをエサウに産み、バスマテはリウエルを産み、アホリバマはエウシ、ヤラム、コラを産んだ。これらはエサウの子であって、カナンの地で彼に生れた者である。
・エサウは妻と子と娘と家のすべての人、家畜とすべての獣、すべての財産を携え、兄弟ヤコブを離れてほかの地へ行った。彼らの財産が多くて、一緒にいることができなかったからである。彼らが寄留した地は、彼らの家畜のゆえに、彼らをささえることができなかったのである。こうしてエサウはセイルの山地に住んだ。エサウはすなわちエドムである。
・セイルの山地におったエドムびとの先祖エサウの系図は次のとおりである。エサウの子らの名は次のとおりである。エサウの妻アダの子はエリパズ。エサウの妻パスマテの子はリウエル。エリパズの子らはテマン、オマル、ゼポ、ガタム、ケナズである。テムナはエリパズのそばめで、アマレクを産んだ。これらはエサウの妻アダの子らである。
・リウエルの子らは次のとおりである。すなわちナハテ、ゼラ、シャンマ、ミザであって、これらはパスマテの子らである。ヂベオンの子アナの娘で、エサウの妻アホリパマの子らは次のとおりである。すなわち彼女はエウシ、ヤラム、コラを産んだ。
・エサウの子らの中で、族長たる者は次のとおりである。エサウの長子エリパズの子らはテマンの族長、オマルの族長、ゼポの族長、ケナズの族長、コラの族長、ガタムの族長、アマレクの族長である。これらはエリパズから出た族長で、エドムの地におった。これらはアダの子らである。エサウの子リウエルの子らは次のとおりである。ナハテの族長、ゼラの族長、シャンマの族長、ミザの族長。これらはリウエルから出た族長で、エドムの地におった。これらはエサウの妻パスマテの子らである。エサウの妻アホリバマの子らは次のとおりである。エウシの族長、ヤラムの族長、コラの族長。これらはアナの娘で、エサウの妻アホリパマから出た族長である。これらはエサウすなわちエドムの子らで、族長たる者である。
・この地の住民ホリびとセイルの子らは次のとおりである。ロタン、ショパル、デペオン、アナ、デション、エゼル、デシャン。これらはセイルの子ホリびとから出た族長で、エドムの地におった。ロタンの子らはホリ、ヘマムであり、ロタンの妹はテムナであった。ショパルの子らは次のとおりである。アルワン、マナハテ、エパル、シポ、オナム。デペオンの子らは次のとおりである。アヤとアナ。このアナは父ヂベオンのろばを飼っていた時、荒野で温泉を発見した者である。アナの子らは次のとおりである。デションとアホリバマ。
アホリバマはアナの娘である。デションの子らは次のとおりである。ヘムダン、エシバン、イテラン、ケラン。エゼルの子らは次のとおりである。ピルハン、ザワン、アカン。デシャンの子らは次のとおりである。ウズとアラン。ホリびとから出た族長は次のとおりである。ロタンの族長、ショバルの族長、ヂベオンの族長、アナの族長、デションの族長、エゼルの族長、デシャンの族長。これらはホリびとから出た族長であって、その氏族に従ってセイルの地におった者である。
・イスラエルの人々を治める王がまだなかった時、エドムの地を治めた王たちは次のとおりである。ベオルの子ベラはエドムを治め、その都の名はデナパであった。
・ベラが死んで、ポズラのゼラの子ヨバブがこれに代わって王となった。ヨバブが死んで、テマンびと地のホシャムがこれに代わって王となった。ホシャムが死んで、ペダデの子ハダデがこれに代わって王となった。彼はモアブの野でミデアンを撃った者である。その都の名はアビデであった。ハダデが死んで、マスレカのサムラがこれに代わって王となった。またサムラが死んでユフラテ川のほとりにあるレホボテのサウルがこれに代わって王となった。サウルが死んでアクボルの子バアル・ハナンがこれに代わって王となった。バアル・ハナンが死んで、ハダルがこれに代わって王となった。その都の名はパウであった。その妻の名はメヘタペルといって、メザハブの娘マテレデの娘であった。
・エサウから出た族長の名は、その氏族と住所と名に従って言えば次のとおりである。テムナの族長、アルワの族長、エテテの族長、アホリバマの族長、エラの族長、ピノンの族長、ケナズの族長、テマンの族長、ミブザルの族長、マグデエルの族長、イラムの族長。これらはエドムの族長たちであって、その領地内の住所に従っていったものである。エドムびとの先祖はエサウである。
(2021.10.7)

「旧約聖書」通読・《創世記》・第35章

■第35章
・ときに神はヤコブに言われた。「あなたは立ってペテルに上り、そこに住んで、あなたがさきに兄エサウの顔を避けてのがれる時、あなたに現れた神に祭壇を造りなさい」。ヤコブは家族および共にいるすべての者に言った。「あなたがたのうちにある異なる神々を捨て、身を清めて着物を着替えなさい。われわれはペテルに上り、わたしの苦難の日にわたしにこたえ、かつわたしの行く道で共におられた神に祭壇を造ろう」。そこで彼らは持っている異なる神々と、耳につけている耳輪をことごとくヤコブに与えたので、ヤコブはこれをシケムのほとりにあるテレピンの木の下に埋めた。
・そして彼らは立ったが、大いなる恐れが町々に起こったので、ヤコブの子らのあとを追う者はなかった。こうしてヤコブは共にいたすべての人々と一緒にカナンの地にあるルズ、すなわちペテルにきた。彼はそこに祭壇を築き、その所をエル・ペテルと名づけた。彼が兄の顔を避けてのがれる時、神がそこで彼に現れたからである。時に、リベカのうばデポラが死んで、ペテルのしもの、かしの木の下に葬られた。これによってその木の名はアロン・パクテと呼ばれた。
・さてヤコブがパダンアラムから帰ってきた時、神は再び彼に現れて彼を祝福された。神は彼に言われた。「あなたの名はヤコブである。しかしもはやあなたの名をヤコブと呼んではならない。あなたの名をイスラエルとしなさい」。こうして彼をイスラエルと名づけられた。
・神はまた彼に言われた。「わたしは全能の神である。あなたは生めよ、またふえよ。一つの国民、また多くの国民があなたから出て、主たちがあなたの身から出るであろう。わたしはアブラハムとイサクとに与えた地を、あなたに与えよう。またあなたの子孫にその地を与えよう」。
・神は彼と語っておられた場所から離れてのぼられた。そこでヤコブはその場所に、一本の石の柱を立て、その上に灌祭をささげ、また油を注いだ。そしてヤコブはその場所をペテルと名づけた。
・こうして彼らはペテルを立ったが、エフラタに行き着くまでに、なお隔たりのある所でラケルは産気づき、その産は重かった。その難産に当たって、産婆は彼女に言った。「心配することはありません。今度も男の子です」。彼女は死にのぞみ、魂の去ろうとする時、この名をベニノと呼んだ。しかし、父はこれをベニヤミンと名づけた。ラケルは死んで、エフラタ、すなわちベツレヘムの道に葬られた。ヤコブはその墓に柱を立てた。これはラケルの墓の柱であって、今日に至っている。イスラエルはまた、ミグダル・エダルの向こうに天幕を張った。
・イスラエルがその地に住んでいた時、ルペンは父のそばめビルハのところへ行って、これと寝た。イスラエルはこれを聞いた。
・さて、ヤコブの子らは12人であった。レアの子らはヤコブの長子ルペンとシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン。ラケルの子らはヨセフとベニヤミン。ラケルのつかえめジルバの子らはガドとアセル。これらはヤコブの子であって、パダンアラムで彼に生れた者である。
・ヤコブはヘブロンのマムレにいる父イサクのもとへ行った。ここはアブラハムとイサクとが寄留した所である。イサクの年は180歳であった。イサクは年老い、日満ちて息絶え、死んでその民に加えられた。その子エサウとヤコブとはこれを葬った。
(2021.10.6)