梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私の戦後70年・友だち

 小学校の一学級は50名を超えていた。いずれも敗戦の中で生まれた子どもたち、父が戦死した母子家庭4人、養父1人、父子家庭3人など戦禍の傷跡が残っていたが、時代は「新生日本」に向かって第一歩を踏み出す。その息吹の中で、大人も子どもも希望に満ち溢れていた。私たちの学年は6年間、編制替えがなかった。そのため友だち同士は家族のように親しくなった。お互いの長所、短所を熟知し、ケンカもしたが団結もした。今でも年一回はクラス会を催し昔話に花を咲かせている。大学教授、会社社長、医師、編集者、教員、獣医、運転手、主婦などなど、途はそれぞれ違っても、その時ばかりは当時の小学生に戻ってしまうのだ。昨年、卒業以来はじめてのK君が参加した。「2年の時、便所に行くのが嫌で、君の目の前で漏らしてしまった。憶えているか」と問いかける私に、K君は微笑みながら優しく応じた。「憶えていないよ、そんなこと!」。(2015.4.15)