梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

たまには「良いとき」もあるかもしれない

 ようやく2019年に辿り着いた。それにしても、この「年の瀬」を渡り切るのはしんどかった。除夜の鐘が鳴り終わる頃、突然、吐き気が押し寄せる。続いて動悸と息切れ、さらに胸痛・・・。原因はわかっている。「逆流性食道炎」と「肋間神経痛」に違いない。ひたすら「内関」「げき門」「大陸」「老宮」といったツボを、かわりがわりに押し続けると、症状は軽減し寝入ることができるが、1時間後には目が覚めて、その繰り返し。「波の背の背に揺られて揺れて、月の潮路のかえり船」(詞・清水みのる、曲・倉若晴生、唄・田端義夫「かえり船」)の文句そのままに、生死の世界をさまようか。私の場合は、戦地から本土に帰るのではなく、三途の川を渡るのでもなく、ただプカプカと波間を揺られているだけのことなのだ。
 今年こそ「彼岸に渡りたい」(悟りの境地を会得したい)と思って、性懲りもなく《元日や六波羅蜜の第一歩》などという駄句を詠んだのがいけなかったか。
 とまれ、年は明けた。明日のことは考えず「呑気に」過ごそう。ケセラセラ、時の流れに身を任せ、明日は明日の風が吹く。一度しかない人生だ。四苦八苦を受け入れて、思う存分、苦しもう。たまには「良いとき」もあるかもしれない。その時こそが「極楽」だ。南無阿弥陀仏、浄土は近い。(2019.1.1)