梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私の戦後70年・静岡浅間神社廿日会祭

 静岡市の浅間神社では恒例の廿日会祭が四月初旬に開催される。小学生の私は、毎年春休みになると、亡母の実家がある静岡の祖母宅に帰省して、そのお祭りを楽しんだ。満開の桜が散り始める神社の境内では、神楽舞台の他、大衆芸能の余興用舞台、オートバイサーカス、お化け屋敷、見世物小屋などが特設される。仲町から赤鳥居までの参道には露天商の屋台が「綺羅星のごとく」連なっている。私は、小銭をポケットに、それら一つ一つのイベントを「食い入るように」見て回った。十通りに使い途のあるナイフ、粉を注ぐだけで泡が出るソーダ水、御飯を詰めるだけでにぎり寿司が完成する型、絶対に焦げつかない卵焼き用フライパン等々の「実演販売」は、昨今のテレビ通販と変わりない。子ども向けには手製の変形ルーレット。丸い板の上に小型カメラ、財布、宝飾品、トランプセットなどを並べ、その上を細い棒が時計の針のようにクルクルと回る。棒の先端には釘が吊され、その釘が止まった品物をゲットできる趣向で、1回の試行代は5円。子どもたちは競ってチャレンジしたが、大半は、はずれの駄菓子を貰って引き下がる他なかった。懐かしい思い出である。(2015.4.13)