梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

参議院の《消滅》

 参院選が終わった。各政党は勝った負けたと騒いでいるが、実は大変な過ちを犯していることに気づいていない。それは、国会における二院制の意味、参議院の役割を全く無視しているという点である。本来の参議院は衆議院を抑制・均衡・補完する機能を持たなければならない。そのためには、参議院議員は「党議」に拘束されない、個人の立場で議論することが要求される。特定の政党に所属している限り、その資格を失うはずだが、現状は「真逆」である。堂々と政党の政策を公約に掲げ、「党議」そのものを看板にして当選したのである。それでは、衆議院を抑制・均衡・補完することなどできるはずがない。かくて参議院は(衆議院の審議を追認するだけの)「第二衆議院」と化し、その存在理由を失ったのである。このことは私の単なる独断や偏見ではない。今からおよそ28年前、参議院議長から諮問を受けた「参議院制度研究会」が研究・検討した結果の報告として、現在の参議院ホームページ、(《参議院のあらまし》「参議院のあり方及び改革に関する意見」(昭和63年11月1日・参議院制度研究会)にも掲載されている。そこでは、「衆議院のみでは十分に代表されない国民各層の利益や意見を代表し、反映すること」「議員各自の意見をできる限り尊重し、反映すること」とされ「政党の党議によって画一化されない多種多様な意見、あるいは非政党的色彩をもつ意見も十分に取り入れ」「その独自性を発揮することが期待される」と述べられている。しかしその意見は、この28年年近く無視され続けているのである。(2016.7.11)