梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私の「罪」

 恐ろしい夢をみた。いつもの町の、いつもの工場の煙突から、黒煙がもくもくと噴き上がる。たちまち、空は曇り始め、辺りは闇のように暗くなった。人々は猛毒の煤煙から逃れようと右往左往する。私も必死でとなりの町に辿り着いたが、そこの工場の煙突からも、また黒煙が吹き出している。「もう駄目か」と観念したときに目が覚めた。夢占いによれば、「運勢は下降気味、手に負えないことが起こる」ということになるらしいが、老いぼれの私にとっては「言わずもがなの知れたこと」、さしあたってその「黒煙」の正体を暴くことが肝要である。もしかして「解釈改憲」?、「集団的自衛権」?、《戦争に勝利はなく、あるものは「恐怖」「悔恨」「悲哀」だけである》という自明の理を、次世代に受け継げなかった、私の「罪」?。今からでも遅くはない。恐ろしい夢が「現実」となる前に、しなければならないことは何か、私は今、それを考えている。(2014.8.6)