梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「自閉症児」の育て方(2)基本的な考え方

2 基本的な考え方
 定説によれば「自閉症児」(と呼ばれる子ども)は、〈1.対人相互反応の質的な障害2.意思伝達の著しい異常またはその発達の障害 3.活動と興味の範囲の著しい限局性〉を主な行動特徴としており、周囲からは〈・言葉の発達が遅い、人に対する関心・反応が乏しい、落ち着きがなく多動である、耳が聞こえていないように振る舞う、対人関係がうまくできない、〉と見られている。しかも、自閉症の原因は(先天的な)「脳の機能障害」によると《推測》されるので、それらの行動特徴は「変化する」(治る)ことがない。しかし、適切な「療育」を行うことによって、社会生活に必要な諸能力を身につけさせることはできる、というのが定説である。
 一方、私の独断と偏見によれば、「自閉症」の《本態》は「人に対する関心・反応が乏しい」という一点に絞られる。定説で説明される3つの行動特徴は、その一点から波及した「枝葉末節」の様態に過ぎない。「人に対する関心・反応」が《生まれれば》、「言葉の発達が遅い」「対人関係がうまくできない」といった問題、「活動と興味の範囲の著しい限局性」(そのことによって生じると思われる、様々な(いわゆる)「常同行動」)といった特徴は、「軽減・消失」するに違いない。
 では、いったい「人に対する関心・反応が乏しい」のは何故か。その原因は一人ひとりの子どもによって「千差万別」であり「特定」することはできない。ある子どもは(先天的な)「感覚過敏」、ある子どもは(後天的な)「環境への不適応」、または(不適切な)「育てられ方」などが《推測》される。
 したがって、《「自閉症児」の育て方》の要点は、①「人に対する関心・反応が乏しい」のは何故か、その原因を子ども一人ひとりに「即して」明らかにすること、②その原因を取り除くことによって「人に対する関心・反応」を《生み出そうとする》こと、に尽きるのである。(2015.1.2)