梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私の戦後70年・キャラメル

  昭和20年代後半、小学生男児の嗜好品はキャラメルであった。その魅力は何よりも強力な「甘味」だが、それ以上に箱の中のカードの一枚、一枚が射幸心を煽った。東京では「紅梅キャラメル」「カバヤキャラメル」が覇を競う。紅梅のカードは「ヒット」「二塁打」「ホームラン」などと記されており、集めて得点すると巨人軍選手の名鑑をゲットできる。さらに監督・水原、投手・大友、中尾、野手・川上、千葉、宇野、平井、与那嶺、小松原、岩本、楠、・・・チームの名鑑が揃うと、グローブ、バットなどの景品がもらえるという趣向だったか。(記憶は曖昧である)一方、カバヤのカードは「カ」「バ」「ヤ」「文」「庫」という文字カード、それらを全部集めると「カバヤ文庫」の絵本が一冊いただけるという按配。またそれらのカードを奪い合う「ポン」という遊び、カードを収納するビニールの定期入れも大いに流行した。私の収穫はカバヤ文庫の「新撰組」一冊に終わったが、近藤勇、芹沢鴨、沖田総司といった面々の行状を知ったのは、その時である。(2015.4.10)