梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「自閉症 治癒への道」解読・《16》第8章 全体にわたる結論

《第8章 全体にわたる結論》
◎要約
・最も重要な要因は心理学的要因である。:自閉的状態とは、不安に支配された情緒不均衡であり、それが対人的なひきこもりにつながり、それに続いて(母子の絆がうまく確立していない時にしか現れない)対人的な相互作用・探索行動を通じての学習ができなくなることである。
・自閉症は「教育不能」ではない。:「自閉症児は教育不能である」とか「関係をつけることはできないが技術を教えることはできる」というような見解を、根拠のないものとして拒否する。
・自閉症の理解と治療を推進する方法:医学のこの領域で用いられてきた研究方法には、比較行動学(生物学、自然科学一般において)で用いられている研究方法がまったく含まれていない。われわれの研究方法と仮説をもっと意図的に活用すれば、自閉症の理解と自閉症児を治す能力が推進されるであろう。
・自閉症の現代文明社会での位置づけ:現代の人間社会は病んでおり、その病気は急速に重くなりつつある。自閉症はその病気の一側面にすぎない。それは、より豊かな、より快適な、より健全な生活に向けて、絶えまなく努力し続けてきたことの結果なのである。われわれは、たしかに生活をより快適にしてきたが、それと同時に大量の新しい圧力を生み出している。それは三つの型に分類できる。
①資源の乱開発:人口の加速度的な増加により、地球の「元金」を食いつぶし、世界の全体的扶養能力(資源の資本)をすり減らしている。また、この「豊かな」社会で販売されている食品、消費者向きの商品は、今や「質的」によくないものになりつつある。
②廃棄物による汚染:われわれの環境には自然による再生不能な廃棄物の汚染が広がっている。
③心理的汚染=社会的環境の荒廃
・人口の都市集中、増大する生存競争と所有欲、「能力向上}努力などすべてが「心理社会的汚染」を生んでいる。自閉症その他多くの心理的ストレス病は、広くこのような文脈においてとらえられるべきである。われわれは、人類の明日を損ないつつあるのである。「拡大家族集団」という社会的な関係を崩壊させ、あるいは家族生活そのものを崩壊させることによって、長期的かつ非常に深刻な損傷をひき起こしている。親として適切な行動能力を十分に発達させる機会を与えられなかった女性や男性を生み育てているのである。この能力は部分的には学習によって身につけなければならないが、「親性を身につけるための課程」の条件はますます乏しくなってきている。われわれは、回復の難しい文化的損失を自分でつくり、自らその被害を受けている。育児書や母親学級などは、どんなによいものであっても、子どもが15歳までに自然の社会的文脈の中で覚えるものを完全に教え込むことは、決してできない。自閉症その他の精神的ストレスによる病気の治療法がわかってきたとしても、人間の場合、しょせん対症療法をしているにすぎない。今、自閉症という問題が存在するのは、われわれが選んできた生活様式によるのであり、変えなければならないのはこの生活様式なのである。
・ウェルチ法を核に新しい治療法を広めたい。:自閉症の多くは治すことができる。統合的な治療法を行った場合にもっとも治しやすく、ウェルチ式の「抱きしめ療法」などがその核をなすはずである。その中に、それ以外の有望な方法をできる限り多く取り込んでいくべきである。実際上は、さまざまな困難がある。ウェルチ法を「読んだり」「観察」しただけでは不十分であり、精神科医、治療士の養成訓練も必要である。「強靱かつ共感的人格」を備えた人であれば、下向きの悪循環のらせんを断ち切ることが「できる」。


《感想》
 ここでは、自閉症の要因は、つまるところ、われわれの生活様式にあり、その生活様式を変えなければならないという結論が、きわめて重要である、と私は思う。これまでに述べてきたこと、そしてこれから述べることも、しょせん「対症療法」にすぎないのだということを、肝に銘じなければならない。さまざまな取り組みを試みながら、同時に、われわれの(その家族の)「生活様式」をどのように変えていくか、どのように人間本来の「生活」を取りもどしていくか、を考えていくことが極めて重要であることを学んだ。
(2013.12.3)