梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「自閉症 治癒への道」解読・《3》第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念(1)

《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
【感想】
《はじめに》
 ここでは、1985年当時の「自閉症研究者」が自閉的状態の本質について、どのように考えているか、著者(ティンバーゲン夫妻)は、その考えをどのように評価(批判)しているか、について述べられている。以下は、その要約である。


・リトボの「自閉症は身体的な、脳の疾患であると確信をもって言えることができる」というような主張は、理論としての体をなしているとは言い難い。
・「自閉症の中心的な特質は“認知ー言語障害”である」(ラター 1972)という考え方は、現在(1985年)のところ英国においては、指導的専門家たちから根強く提唱されている。リックス、ウィング(1976)も、同じ方向で考えている。「それはシンボルの取り扱いの独特な困難さと考えられ、それが言語や非言語的なコミュニケーションその他さまざまな認知活動および社会的活動に影響している」と述べているが、この考え方は、親の会その他のこれら権威に追従する人々によって広く受け入れられている。しかし、その考え方を受け入れることはできない。その理由①自閉症は第一義的に「認知ー言語障害」であるということ自体が事実に合わない。自閉症児が多くの面接場面や標準テストで非常に低い能力を示すことは事実だが、それは主としてテストの方法の不適切さによるものである。②部分的にすぐれた能力や、対人的なひきこもり、常同行動、環境や日課の変化への抵抗、そして(しばしば驚くほどよく)話しことばを理解しているなどのことについて、どこまで、どう説明しうるのか、具体的にはっきりと示されていない。③認知ー言語障害は「症候群」の中の他の各「要素」の中心的な原因というよりもむしろ結果かも知れない可能性が、納得できる形で排除されていない。
・その他いろいろな仮説(全般的な覚醒状態を自閉的状態の核心と考えるもの、自閉症は第一義的には知覚の障害によるものであるとするもの、神経系統の末梢部の構造的欠陥によるとするもの等々)が提唱・示唆されたりしているが、全般的説得力としては無力である。


2013年の現在、ラター、ウィングらの「認知ー言語障害」説にかわって、「先天的(器質的)な脳機能障害」説が、「親の会その他のこれら権威に追従する人々によって広く受け入れられている」のが事実であろう。はたして今は故人となったニコ・ティンバーゲン博士は、この現状をどのように「評価」するであろうか。(2013.11.15)