梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

人間は何のために生きるのか

 一言で言えば、「自分以外の人間を励ます」「勇気づける」「その気にさせる」ためではないだろうか。人間は「社会的動物」であり、一人では生きていけない。つねに誰かを必要としているのである。そこまでは「わかったつもり」でいたのだが、そのことと「人間は何のために生きるのか」という命題とを結びつけて考えることがどうしてもできなかった。自分が他人を必要としていることはわかる。しかし、他人が自分を必要としているかどうか、それを「実感」することはむずかしい。他人から必要とされたい(社会的承認欲求)と思うことは、人間本来の三大欲求(他は食欲と性欲)であることも「知識」としては知っていたが、それが「人間は何のために生きるか」という命題と関わりがあろうとは・・・。大切なことは、他人が自分を必要としていることを「実感」することではなく、「他人のために生きる」という自分の(強い)意志ではないだろうか。人間は、「他人が生きている姿を見て」、自分もまた「生きよう」とするのではないだろうか。もしそうだとすれば、私の「生きている姿」を見て、「自分も生きよう」と「励まされている」「勇気づけられている」《他人》がいるかもしれないのである。(客観的には、そのような他人がいるとは全く信じられないことだが)まあ、そんなわけで、自分のために生きるか、他人のために生きるか、そこが重要な分岐点になると思う。
(2008.9.3)