梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「急性心筋梗塞」病状記・9・《付録・「胃カメラ検査」》

 「急性心筋梗塞」で緊急の手術をしてからあと1週間余りで2カ月となる。術後の経過は「おおむね良好」(循環器内科の所見)だが、「吐き気」「腹部膨満感」のため食が進まず、体重が3kg減った(57kg)。主治医から、念のため(別の病院で)「胃カメラ検査」を受けるように助言されたので、今日、朝一番で受けた。この病院は1939年(昭和14年)、内科・小児科医院として開院、大学病院とは違って、地域に密着したアット・ホームな雰囲気である。医師や看護師も「年季が入った」ベテランが揃っている。
 どんな医師、どんな看護師が対応してくれるのか、興味津々で来院すると、受付時刻ピタリ、相当年配の看護師が現れた。「さあ、検査をしましょう。初めてですか?」「10年以上前に受けましたが、もう忘れました」。彼女は微笑みながら「では、まずこれを飲んでください」と発泡液を手渡す。「つぎに、のどの麻酔をします。ゼリー液を5分間、口に含んでから飲み込んでください。検査直前にもう一度、スプレーの麻酔液をのどにかけます」。検査の時刻がきた。内視鏡室に入り、ベッドに横臥する。担当の医師(中年男性)が看護師に尋ねる。「この薬、全部飲んできたの?」「ハイ、血液サラサラの薬も飲んできています」「・・・・・」。普通なら、食道や胃の内壁から出血した場合を考えて、バイアスピリン錠、エフィエント錠などは休薬とするのだろう。しかし私の場合は、主治医から「休薬せず」と厳命されている。担当医は「・・・そうか」と、意を決したように「では、始めます」と言い、私の前に立った。看護師が「大きく口を開けて、これをくわえてください」と、マウスピースを口の前に差し出す。「では、これを入れていきます」小指ほどの太さの管が挿入される。「鼻で息をしてください」「はい、ちょっとがまんだよ」。ぐぐっと管が食道に押し込まれる感じがした。「はい、胃に入ります」「もっと奥まで行きます」「少し押される感じがします」・・・「もう、半分以上、終わりました」「あと、少しです」(などと言いながら10数枚の写真を撮り終えたようだ)「では、抜いていきます」「はい、がまんね」。この間、看護師は終始、私の背中を心地よくさすってくれていた。医師は管を抜きながら「ポリープが5,6個見つかりました。でも良性です。まず悪性になることはないので、安心してください」と言い、10分程度でこの検査は終わった。(10年以上前の検査では、途中で「ゲーゲー」して若い医師から「それダメ!」と言われたことを思い出した。)今回は、ほとんど苦痛なく検査を受けられた。なるほど、さすがはベテラン医師とベテラン看護婦、80年近くに亘る個人病院の実力と伝統を思い知った次第である。
 (撮影した写真の映像を見せながら)医師の話、「今回の検査で1ミリから5ミリのポリープが見つかりましたが、いずれも良性です。ピロリ菌の心配もありません。ただ一つ『逆流性食道炎』の疑いがあるかもしれません。胸やけはしませんか」「吐き気があり、食べられません。体重が減っています」「食べられなければ体重は減ります。今年は暑かったので夏バテではないでしょうか」。
 またしても、「夏バテ」か。ともかくも、胃には異状がないことを確認して帰路に就くことができたのであった。(2018.8.17)