梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

ひろさちや、という人を御存知か

 ひろさちや、という人を御存知か。「(本名・増原良彦)略歴 昭和11年、大阪市に生まれる。昭和35年、東京大学文学部印度哲学科卒業。昭和40年、同大学院博士課程修了。その後、気象大学校講師となり、20年間教壇に立つ。現在、「まんだらの会」会長、仏教思想の研究、執筆、講演に活躍中。著書『仏陀に還れ』(主婦の友社)、『仏教とキリスト教』(新潮選書)、『仏教の世界観』(すずき出版)、他 多数。」〈「ひろさちやの日本仏教を読む・ビジネスマンのための生き方入門」(主婦の友社・平成5年)・巻末〉ということである。仏教に関する本、数多ある中で、私にとってはこの方の著書が大変親しみやすく、面白い。例えば・・・、私は電車の座席に(長距離旅行時以外は)ほとんど座らない。そうすれば、誰かに席を譲る手間がないからだ。普段から、何となくそうしていたことが、「仏様の教えに適っている」というのだから、うれしくなる。相手に感謝されるような行いは慎まなければならない、大切なことは、こちらが「ありがとう」という気持ちを持つことなのだそうである。また、例えば・・・、生きることは「苦」である。そしてその「苦」の原因は「欲」である。「欲」には「自然的欲望」と「奴隷的欲望」の二種類がある。「自然的欲望」の代表は食欲、食べれば食べるほど減退する。「奴隷的欲望」の代表は金銭欲、物欲、得られれば得られるほど増大する。私たちは、すべての「欲」を「自然的欲望」の段階で抑え、足ることを知らなければならない、といった「解説」に私は心底から納得できるのである。ひろさちや氏の著書を読めば読むほど、「釈迦牟尼仏」(お釈迦様)の「人となり(?)」が身近なものに感じられて、思わず落涙することもあるほどである。元気を取り戻し、冥界を彷徨っている割には「心静かに」安定した時間を過ごせるようになるのではないだろうか。(2010.1.26)