梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「トカゲのしっぽ切り」

 「証人喚問」に応じた東大出の元官僚は、公文書改竄の責任の一切を、自らが負おうとしている。それが官僚の美学だと永田町の面々から称賛されるかもしれない。彼が責任を負ってくれたおかげで、自分の地位が守られるからである。いわゆる「トカゲのしっぽ切り」の典型的な結末である。しかし、そんなことで幕が下りるわけがない。なぜなら、元官僚から改竄を指示された(と思われる)部下が自殺しているからである。人の命は「地球よりも重い」のである。元官僚の部下は「なぜ自殺したのか」、元官僚の最も重い責任は部下を死なせたことである。この問題の究明こそが「全容解明」には不可欠だと思われるが、なぜか今もって判然としない。検察庁の捜査でそのことが明らかにされるのだろうか。もし「個人のプライバシー」を盾に、現状が続くとすれば、民主主義の根幹はもろくも崩れ去ったといわなければならない。(2018.3.29)