梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「証人喚問」という《茶番劇》

 東大出の元官僚と政治家が繰り広げる「証人喚問」という茶番劇は、子どもたちが「嘘のつきかた」を学ぶには格好の教材になる。政治家曰く「○○からの“指示”はあったか」それに対して元官僚の証言は「ございません」。この喚問は、元官僚に真実を語らせないようにするため、いわば政治家の「助け船」である。“指示”という文言を、あえて意図的に使うことによって、いっさいの影響、圧力がなかったことを示そうとしている。首相およびその周辺、もしくは財務省の幹部からの“指示”があろうはずもない。指示がなくても、物事が思惑通りに進んだという経緯、さらにその延長として「死者」が出たという事実、その要因が究明されなければならない今、子どもでもわかる愚問が繰り返されていたのである。首相曰く「何故このようなことが起きたのか」、それは自分自身が首相という立場にいたからである。自分の妻を(得体の知れない)小学校の名誉校長にさせたからである。首相自身が理事長の教育方針に期待を寄せたからである。にもかかわらず、「私も妻も一切関わっていない」という嘘をついたからである。「全容を解明しなければならない」という文言も、白々しい嘘である。決してその全容が解明されることはないだろう。首相が全容を解明すれば、みずからの発言通り、総理大臣も国会議員も辞めなければならなくなるからである。
 いずれにせよ、この茶番劇をとおして、国民(私)は首相およびその周辺が、「日本会議」のメンバーのために、「教育勅語」を目標に掲げる《望ましい》学校を作ろうとしていたという「真実」を垣間見ることができる。私利私欲にまみれている大人たちはともかく、せめて次代を担う子どもたちだけには、その茶番劇にひそむ「嘘」や「ごまかし」を見抜ける洞察力を持ってもらいたい、と私は思った。(2018.3.27)