梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私の戦後70年・小学校入学式

 昭和26年4月、新しいランドセルに草履袋、革靴、学帽、よそゆきの洋服・・・、「ピカピカの一年生」の装いで、私は入学式に臨んだ。しかし、学校に対する恐怖心は増すばかりで、「泣き通し」の一日であった。セピア色になった記念写真には、当時の「泣き顔」が残されている。式が終わって、新入生は教室に入った。皆、自分の名札が貼られた席に座り、ランドセルを机上に置いている。担任のM先生もやって来て、自己紹介のあと「では、初めての勉強をはじめましょう。机の上にあるランドセルをこしかけに背負わせてあげましょう」。一同は、すぐに仕事にとりかかったが、私はどうしてよいかわからない。とうとう、私のランドセルだけが一つ、ポツンと机上に残されたままになってしまった。見かねた隣のI君が「できないの?じゃあ、ボクがやってあげるよ」と、やり方を教えてくれた。I君も今や70歳、まもなく100歳をむかえる御母堂の介護に暇がない。(2015.3.31)